天元突破グレンラガン

 というわけで最終回が終わって、思う所は色々あるのだけど、第一に驚いたのが、最終話の展開がタイトルの元ネタ『天の光はすべて星』と結構重なっているところが多くて、どうせタイトルだけ適当に引っ張ってきたんだろうと思ったら、全然そんなことはなかった。
 具体的にどこら辺が似てたかといえば、『天の光はすべて星』ってのはロートルの元宇宙飛行士が、ロケット打ち上げ計画を推し進めて、それに乗って自分も宇宙を目指そうというお話で、こっからはネタバレ気味になるけど、その計画を推し進める際に、力になってくれた女政治家と老いらくの恋を演ずるんだけど、女政治家は途中で病気で死んじゃって、俺がお前の分までロケットを飛ばすよって思ってた矢先、計画の中心からも外されて、いざロケットを飛ばすって時には、親戚の子供と一緒に、地上からロケットが飛び立つのを見守るってところで終わりなんだけどさ、Cパートがその終わり方と大分被る。
 もっとも、この小説だと、主人公は宇宙に行きたくて行きたくてしょうがないぜって感じだったのに、不本意な形でその立場を降ろされるのに対して、シモンは自分から去っていったわけだけど、後続への道を開いていったってところではやはり共通している。
 しかし、シモンも随分あっさり去っていったもんだとも思ったが、終わった今改めて考えてみれば、シモンは元から周りのキャラと縁が薄かったというか、結構変わった主人公で、積極性はあるんだけど、下手するとシンジ君ぐらい自発性が無い奴だった。自発性が無いというか、何だかんだで、カミナの代わりにしかなれない奴だった。
 実際シモンの周りの人物を観てみると、グレン団自体がカミナのお下がりで、あまりグレン団の他のメンバーとの絡みは無かったし、ライバルのヴィラルだって、途中までシモンが乗ってるグレンラガンにカミナが乗っていると思い込んでたって意味では、ある種カミナの代理でしかなかった。逆にヨーコはシモンをそうしたカミナの代理と見なすのを恐れて、少し避けていた節がある。結局、シモンの周りの人間のほとんどはシモンよりもカミナに魅かれていた人物だと言って良いと思う。
 さらに言うならば、乗ってるマシンにしろ、宇宙船にしろ、ロージェノムのお下がりでシモン独自のものは存在していなくて、結局、シモン自身の物ってのは、コアドリルぐらいしかなかった。 
 26話で、カミナの「俺のススメに中身をくれたのはお前なんだ」という台詞があったけど、結局シモンは中身というか螺旋力だけは充分以上にあったにも関わらず、そのススメが決定的に不足していて、そのせいで、成長すれば成長するほど、カミナにならざるを得ず、11話では「俺は俺だ! 穴掘りシモンだ!」とは言っていたが、やはり最後まで、カミナの影響から抜け出ることはできなかった。
 そんなシモンの人間関係において、特別な存在に当たるのが、カミナの死後に登場したニアで、第4部じゃそのニアを助ける為に戦うっていう、ようやく自分の意志で戦うことを選択したのに、最後の戦いの最中にアンチスパイラルを倒す=ニアを失うってことに気づいてしまう。それでも、「為すべきことをするために」アンチスパイラルを倒してしまう。
 結局、シモンは「カミナの代わり」に大グレン団を率いて、「ロージェノムの代わり」に螺旋族を救う為、アンチスパイラルと戦い、自分の本来の望みであるニアを諦めざるを得なかった。ここでは、シモン自身の意志というものがほとんど反映されない。結局シモンは誰かの代理でしかなかったし、代理としての仕事も終えてしまった。そして、唯一シモンを他の誰でもないシモンとして認識していた人物は死んでしまった。
 だからコアドリルを渡して、完全に役目を果たした後は、世捨て人となって、最後には「俺を誰だと……いや、誰でもないか」なんて悲しいことまで言ってしまう。
 最終話でヨーコは「シモンは神様でないわ」なんて言ってたけど、神様でないのと同じくらい人間味も薄かった。穴を掘るだけ掘って、その穴を通ろうとはしなかったという点で、正に限りなくドリルに近い男だった。
 あのラストは大変物悲しいのだけど、シモンという人間はその性格上ああなるを得なかったのだろう。
 ただ、もしカミナが生きていたら、もしニアが死ななかったらといれば、あるいは……と考えたら、やはり、寂しくはなる終わり方なのだが、2chからの引用になるけど、

 389 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/10/01(月) 01:37:13.09 id:Kvhy2jpo0

最終回は最後のオチとニアの死が気に入らない
あとは良かった。

702 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage] :2007/10/01(月) 00:15:11 ID:/ALKkvHJ
>>641
1話冒頭はバッドエンドだよ
むしろあのシモンとブータこそが宇宙を滅ぼすスパイラルネメシスだった
力を行使し、揮い、「天の光はすべて敵」と認識していたシモンとブータが
「天の光はすべて星だ」「螺旋の友が待つ、星々だ」と言えたことで
スパイラルネメシスは回避されたと言える






888 名前:風の谷の名無しさん@実況は実況板で[sage]:2007/10/01(月) 00:35:43 id:JesjQ+6M
・1話冒頭
シモンに問うブータ(人語で)
天の光は全て敵
敵艦隊無量大数
俺を誰だと思ってる
宇宙で語るシモン

・最終話ラスト
シモンに問うブータ(豚語で)
天の光は全て星
螺旋の友が待つ無限の星々
いや、誰でも無いか
地上で語るシモン

という事を考えると、あれ以外のラストはやっぱないんだろう。
 ちなみに最終回の何が面白かったって、上半身素っ裸、パーティーマスク装備のシモンに対して、ニコニコで「シモンSM嬢みたい」ってコメントがついてたのに滅茶苦茶笑った。もうどうせなら、結婚式から、20年後まで、ずっとあの格好で通してくれれば良かったのに。



 それにしてもヴィラル。恐らく、この作品で一番の勝ち組のヴィラル。
 最初はエリートだったはずなのに、人間に喧嘩で負けるわ、コケにされるわ、上司が死ぬわ、新しくついた上司にしこたま殴られるわ、その上司も死ぬわ、一番偉い人の直属になって、不死身の力を得たと思ったら、「お前記録係だから」って、バリバリ営業で活躍していたのが、急遽社史編纂科に飛ばされたって感じになるし、さらに直属の上司は死ぬし、しょうがないからフリーでプラプラしていたら、牢屋に突っ込まれるわで、物凄い転落っぷりを演じていたのに、混乱の最中、その能力を買われてヘッドハンティングされて、どさくさにまぎれて、組織のナンバー2的ポジションにまで成りあがり、終いには地球を代表する船の艦長にまでなるっていう人生大逆転っぷりを見せてくれて、人間最後まで諦めちゃ駄目なんだな、とその活躍は我々としても大変見習いたいのだけど、そのヴィラルが本当に望んでいたのが、家族で仲良く幸せな暮らしだったという事実は、何とも我々を複雑な心境にさせてくれるし、俺はヴィラルが大好きすぎるなとも思った。