子供たちを責めないで

 何の因果か、いまさら『聖闘士星矢』を全巻読んだ。
 よくブリーチだのワンピだのを捕まえて、「こんなのを読んで面白がるのはゆとりw」なんていう意見を目にするのだが、正直な話、これと肉と男塾を楽しんでた奴にその台詞を言う資格は無いと思う。
 特に星矢は今見るとかなり酷くて、もう陳腐も陳腐というか、そもそも人物の描き分けがほとんど出来てない上に、性格が安定していないので、キャラクターが誰が誰なのかもよくわからなくなるし、バトル描写も必殺技が適当というか、名前が違うだけで、やってることは全員見開きドーンで、その名前もださかったりする上に、物語の展開も同じことの繰り返しというか、紫龍は5巻に一回ぐらいのペースで目が見えなくなるし、氷河と瞬は3巻に一回ぐらい死ぬし、一騎は味方のピンチに現われ、敵の一番強い奴と戦って相打ち、で、それから、味方がピンチになったら、また勝手に甦ってやって来て、相打ちっていう同じことの繰り返しだし、設定も矛盾だらけでどうしようもないんだけど、全巻一気読みするぐらいには面白かったよ。
 俺の気に入ってるジョークに「聖書と薬局は似ている。売り物は同じだが、客は変わっていく」なんてのがあるのだけど、それは丸っきりジャンプにも当てはまって、例えば今ジャンプでやってるBLEACHやリボーンって、やってることは、それこそ聖闘士星矢や男塾と大差が無くて、荒木飛呂彦なんかユリイカで、BLEACH車田正美の同人誌みたいって言っていて、確かに作り手の視点からすれば二十年も昔の漫画と、同じことやっててどうするんだよっていう気持ちはあるだろうし、昔から漫画を読んできた人たちにすれば、アラーキーの意見にも賛同するのだろうけど、最近の若い読者がそれを楽しんでしまう分にはしょうがないんだよね。ああいう展開は皆好きだし、彼らにとってはその漫画が初めての経験となるのだから。
 で、現代っ子の俺に言わせれば、客観的に時代背景とかを抜きで読んだ場合、BLEACHの方が出来は良いと思うのだが、聖矢を読んでいると、まるで今のジャンプ漫画の原型を読むような、それこそ神話を読んでるような、独特の感覚があって面白かった。何か感動したね。あと、これは星矢に限った話じゃないけど、当時の漫画の展開の速さは素晴らしいと思う。ついこの前まで音速の速さが精一杯だった奴が、五巻先にはもう光速のパンチを打ってるんだぜ。