自由主義少女リベ子ちゃん

「ねーねー、リベ子ちゃん、大変だよー」
「あら、あなたは私の使い魔のラルじゃない。どうしたのそんなに慌てちゃって」
「うわー、説明的な台詞だねー。そんなことよりこれ見てよ、これー」
「なになに。三次元より二次元の方がいい…………スト4ってやっぱりコケちゃうのかしら
対戦格闘ゲームの話じゃなくて、実際の恋愛にまつわる話だよー。それと、SNKはもう手遅れっぽいよー」
「まぁ、いいんじゃないのかしら、別に。本田透やそのファンだったら、ごく当たり前に肯定しそうな意見だけど」
「ところが、コメント欄にちょっとアレな人がいるんだ。この『オタクな父さん』って人なんだけど…………」
「子供の立場からしたらオタクが父親なんて、本気で気色悪いわよね。そんな劣悪な遺伝子を残すぐらいなら、さっさと去勢すればいいのに」
「リベ子ちゃん駄目だよ! 言及先の内容とは一切関係ない、ただの言いがかりになってるよ! しかも人格批判を通り越して、単なるオタク批判になってるから、不必要に敵を作ってるよ!」
「うふふ、冗談よ。冗談。ニグロジョークの一種よ」
「何だ、単なるベサツジョークだね。ベサツは皆大好きだから何一つ問題が無いね」
「そうね。しかし、この人最初の方はまだ、まともそうだったけど、書き込みが後になればなるほど、スモーキーな匂いを立ててくるわね。うわっ、『人並みに生きられないのに講釈をたれないで欲しい。』ですって」
「けど、僕この人の書いてることを見たら何だか不安になってきたんだ。もうすぐ30代後半だってのに、彼女もいないし、結婚も出来そうにないし、年金は払ってないし、最後に職についてから、もう10年以上経つし……」
「ラル……不安になるのが、ちょっと遅すぎじゃないかしら……」
「これまでは、それでも自分は大丈夫だって思ってきたけど、この人の言う通り、身勝手な個人主義に陥ってないで、結婚すべきなんだろうか」
「けど、本当にそんなに無理して、結婚する必要があるのかしら」
「だって、このままだったら、少子化が進んで日本経済は破綻しちゃうよ!」
「あら、ラルってば世界レベルでは人口の増加が問題になっているのよ。国家単位の経済問題の為に、安易にポコポコ子供を産むのが本当に正しいと言えるのかしら。それに今は若い人たちニートワーキングプア層が増えているのよ。こんなお先真っ暗な時代に、果たして本当にたくさん子供を産むのが正しい手段と言えるのかしら」
「けど、リベ子ちゃん。そんな奇麗事言ったって、このままじゃ日本はにっちもさっちも行かなくなっちゃうよ!」
「慌てない、慌てない。私がとっておきの解決方法を考え出してあげるわ。ポクポクポクポク…………リベラル☆リベラル☆ルルルルル〜」
「出た! リベ子ちゃんの取りあえず言ってみた感が強い呪文っぽい何かだ!」
「全ての解決方法が見つかったわ、ラル」
「本当かい? リベ子ちゃん!?」
「ええ。オタクな父さんはこんなことを言っていたわね」

自分の親でもない独居オタ老人を養う若者の立場は?
自由自由と個々人の権利ばかりを主張するのは極めて幼稚な考えだと思います。皆が皆そういう自分中心の考え方を持ってしまったらやはり社会が成り立たない。自分という個人だけを捉えて考えないで今の子供たちやその先の世代についても考えてはもらえないものでしょうか。

「うん、そんな書き込みが確かにあったよ」
「じゃあ、答えは簡単よ。日本中の老人は年金を受給できる年齢になったら皆その瞬間に殺しちゃえばいいのよ
「凄いや! もうリベラルでもなんでもなくて、ただの暴論だよ!」
「だって、社会を成り立たす為だったら個々人の権利は蹂躙しても良いんでしょ。だったら子供たちや先の世代の為に老人から生存権を奪い取ったって何の問題も無いじゃないの。これで、年金問題も医療費も完全に片付くわ。子供達に明るい未来がやってくる〜♪」
「極論以外の何者でもないよ! あと、生存権を奪う=ぶち殺すってのは間違った解釈だよ」
「じゃあ、本当に生存権を奪っちゃえばいいじゃない。かの藤子・F・不二雄先生も『定年退食』という短編で、「定員法」っていう、一定の年齢以上の老人には年金や食糧、医療その他の一切の国家による保障を打ち切るという法律を作り上げていたわ」
「流石F先生! 絶対Aよりも極悪人だね!」
「けど、社会を優先して個々人の権利を認めないと、最終的にはこういう話に行き着くのよ。これで今日も万事解決ね! リ〜ベラル〜、トカ〜レ〜フ〜、キルゼムオ〜ル〜♪」
「終わった! 相手の揚げ足を取って極論をぶん投げて、相手が間違ってるんだから、こっちは正しいに決まってるという印象を植えつけて終わらせた! 流石、リベラルだ!」


つづかない