ヱヴァ:破の感想。あるいはメガネとアスカ

 インターネットというのは使い方によっては大変便利なものですが、こちらの知りたい情報だけをピンポイントで入手できるとは限らないのが悩みの種で、とある話題作が面白いって評判なので、軽い気持ちで情報をつまんでみようとしたら、あっさり致命的なネタバレに触れる危険性があるもので、それぐらいなら避けようもありますが、何となく暇つぶしにtwitterを見ていたらネタバレされてたりするわ、2chニュー速を見ていたはずが、主な展開を丁寧にまとめたレスを読まされたりするわで、やはりインターネットというのは恐ろしいと思いもしたが、そういや、昔「ばんがいち」に載ってたコラムで、『シックス・センス』のネタバレをされていたせいで、今になっても、結局『シックス・センス』は見てないままです。あれだろ、実はブルース・ウィリスの正体がエドワート・ノートンの一人芝居だったんだろ。知ってるよ、もう。
 なにはともあれ、ネットがあろうが、無かろうが、とりあえず、流行ってるものに興味持ったら出来るだけ早く見とけという話であり、長々と前置きをしましたが、こっから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のネタバレをするので、見てない人は帰って寝て明日観に行けという話ですよ、もう。
 いや、本当面白かった。はてブエヴァ一色になってて、何だ、あの色キメエ。あんなことやってる暇があったら、さっさと携帯のはてブから増田観た時ちゃんと表示されないのを早く直せや、タコとか思いましたが、あれぐらい推しても仕方が無いかな、だって面白かったですものって思えるぐらいは面白かった。
 そもそも自分リアルタイムでエヴァを見てないんで、シンジ君にもあんま思い入れが無くて、熱血キャラになった彼を見ても、「『エウレカセブン』がやりたかったのってこういうことなんだろうな』ぐらいにしか思わなかったのですが、そんな真剣なエヴァファンじゃなかった僕にもメガネの人はキュンキュン来ましたね。
 「メガネをかけてて、声が坂本真綾で、登場してすぐ歌まで歌っているんだから、垢抜けたリップバーン・ウィンクルじゃん、これ」とか、「メガネで緑色ってことはケンスケとキャラ被るな、こりゃすぐ死ぬわ」とか、「クーデレ、ツンデレ、ときたら当然次はヤンデレだな。メガネで緑色だし、間違いなくヤンデレだな」とか、「メガネ危なくね? そもそもLCLが充満してるところでメガネって意味あるの? そんなにキャラ立ちに自身がないの?」とか思いましたが、それらの心配が全て杞憂に終わるぐらいに良いキャラでしたね。
 外見のイメージとは全然別のバリバリの武闘派で「わしゃあ、エヴァに乗って、使徒の連中とガツンガツンと殴り合いがしたいんじゃあ!」とか「すまんのう、わしの喧嘩の為にエヴァを利用させてもらってほんまにすまんのう……」と言った台詞に驚きの連続ですよ、もう。
 そうなんですよ、神にも悪魔にもなれるスーパーロボットに乗ってる以上、こういう考えこそが妥当で「父さんに褒められたい」とか「自身の有用性を示したい」とか女々しい理由で乗られても困るんですよ。お仕事だから嫌々やるんじゃなくて、仕事だからこそもっと楽しんでやりましょうよ。
 そんな新たなサブヒロインの登場で、立場が悪くなったのが、前作最後まで生き残ったアスカさん。序では一切出番が無かったし、中の人も、声優業よりパチンコ屋のドサ回りをしている印象が強く、名前も変えられた事もあって、今回は出てきて早々に死んだり、お払い箱になったりするのではと思われましたが、正統派ツンデレになることで、見事キャラ立ちをキープしました。
 前作はアスカはツンデレか否か、ツン要素はあるけど、デレ要素は希薄だよね。シンジを恋愛の対象として見てないよね。などの多くの激論が交わされましたが、今回はどう見てもデレてました。特にシンジだけじゃなくて、周りの人々、綾波やミサトに対してデレていたのが良かったと思います。
「べ、別にあんたの為に三号機に志願したんじゃないんだからね! 私が新型に乗りたかっただけなんだから!」
 こうして、当て馬のツンデレキャラという、物語的にはそこそこ美味しいポジションをゲットし、トウジから三号機に乗る機会を奪い取った結果、委員長にフラグを立たせること前に潰すことに成功。「映画は二時間しかないから、お前みたいなモブキャラのラブシーンに割いてる時間はねえんだよ!」という女の意志が見ているこちらにも伝わってきました。
 そして、今回の一番の衝撃&鬱シーンであるアスカが載ってる三号機がボコられるシーンですが、BGMでこれを思い出したせいで、ずっと半笑い。

 シンジの叫び声や三号機が無残に破壊される効果音が劇場に響く中、俺の脳内では、「懐かしいな、この空き地。よく俺とお前と土管おじさんで野球したな」「なんだよ、せっかくプレゼント交換したのに結局みんなオナホールじゃんかよ」という昔の伊集院ラジオのネタがずっとリフレインしてたせいで、感動も何もあったもんじゃありませんよ。
 それから、再びメガネのターン。
 アスカの代わりに二号機に乗って、アスカも使っていない面白機能をフル活用した結果、ザ・ビーストとか言い出して大暴れする姿は実に痛快で、史実通り綾波が爆弾持って特攻してる横で、ムシャムシャ口でATフィールドを剥がしている姿には、「二号機はこれからずっとあたしが乗るから、お前は亀戸のガイアにでも行って、パチンコの宣伝でもしてこいよ」という闘う女の意志を見て取ることができました。
 そして、自身がボロボロになって街が壊滅状態になっているにもかかわらず、ヘタレてるシンジ君を見つけても、「おい、坊主、ここはおっちゃんに任せてお前はとっとと逃げろや」とシンジ君を逃がせようとする気っ風の良さ。男前すぎてしびれます。
 他の大人たちがあの手この手でシンジ君をエヴァに乗せようとするのに対し、あそこで、シンジ君を積極的に逃がそうとするのはこれまでのエヴァにはありえなかった異質な行動であり、新キャラとしてキャラ立てすることに完全に成功です。これによってメガネの地位は120パーセント確立されました。果たして夏コミには間に合うでしょうか。
 このような結果、メタ的にも、作中的にもサブヒロイン対決はメガネの人の圧倒的な勝利に終わりました。今回勝った、メガネの人は垢抜けたリップバーン・ウィンクルでもあるので、きっと次回作ではロンギヌスに貫かれたあと、量産型エヴァにムシャムシャ食われたりするでしょう。
 しかし、気になるのは次回予告です。
 メガネの人があんなにレンズを割って、漫画太郎のキャラみたいに眼球にレンズがぶっすりと思ったら、結局眼球セーフだったのに対し、何故かアイパッチをしていたアスカ。
 21世紀仕様のお洒落フレームメガネに対し、単なる装飾無しの黒アイパッチで勝てるのかは疑問です。あんな地味なアイパッチなんて今時サガットぐらいしかしてませんよ。せめて黒アイパッチじゃなくて、医療用の眼帯ぐらいはするべきじゃないでしょうか……と思ったら、そもそも眼帯自体が綾波が4000年前に通過済みでした。あんなアイパッチぐらいで、式波さんはポッと出のメガネに勝てるのでしょうか……。
 そんなわけで、次回作では、メガネ対アスカのサブヒロイン対決二回戦に加えて、ラストでそれぞれシンジ君との絆を見せ付けた、レイ対カヲルのメインヒロイン対決が今から楽しみですね。
 メガネの人の活躍をもう一度観に行きたいし、そもそもメガネの人の名前をよく覚えてないので、また劇場に足を運ぼうかなと思います。