ヱヴァ:破の感想。あるいはメガネとアスカとそのほか。

 インターネットというのは使い方によっては大変便利なものですが、こちらの知りたい情報だけをピンポイントで入手できるとは限らないのが悩みの種で、ヱヴァ新劇場版が面白いって評判なので、軽い気持ちで情報をつまんでみようとしたら、致命的なネタバレに遭遇したりするもので、それぐらいなら避けようもありますが、何となく暇つぶしにtwitterを見ていたらレイが巨大化するとか言われるわ、2chニュー速を見ていたら、ラストでシンジがアスカの首を絞めるとかネタバレ満載のレスを読まされたりするわで、やはりインターネットというのは恐ろしいですね。そういや、昔「天魔」に載ってたコラムで、『アンブレイカブル』のネタバレをされていたせいで、あれから何年も経ちますが、結局いまだ『アンブレイカブル』は見てないままです。あれだろ、実はカイザー・ソゼの正体がブルース・ウィリスだったんだろ。知ってるよ、もう。
 それはそれとして、この日記に既視感を覚えるのは、俺が先日、『ダンシング・ヴァニティ』を読んだ事とも、『ディアボロの大冒険』をプレイしたこととも一切関係有りません。今回の映画版のように全ては繰り返されるのです。長々と前置きをしましたが、こっから『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のネタバレをするので、見てない人は帰って寝て明日観に行けという話ですよ、もう。
 いや、本当面白かった。はてブエヴァ一色になってて、何だ、あの色キメえ。緑と紫とかないわー。引くわー。あんなことやってる暇があったら、携帯ではてブから増田を観た時にちゃんと表示されないのを早く直せや、タコとか思いましたが、あれぐらい特集しても仕方が無いかな、だって面白かったですものって思えるぐらいは面白かった。と思ったのでもう一回観に行ったぐらい面白かった。
 そもそも自分リアルタイムでエヴァを見てなくて、エヴァといえば、『失楽園』か『エンジェリック・インパクト』なんで、あんなエロ漫画がこんな面白いアニメになるなんて! という新鮮な驚きがありました。ほら、俺の中の漫画版エヴァって船堀斉晃だから。
 新キャラのメガネの人はなかなか名前覚えられないなぁ、と思って、名前の出るシーンチェックしたところ、屋上に落っこちて、英語で電話してるシーン以外で名乗ってないし、他の登場人物も誰一人彼女の名前を呼んでないので、こりゃ紙媒体無しで一発で覚えるのは不可能だわ。そして、イラストなんとかという下の名前が覚えられないままなので、もう彼女の呼称はメガネでいいと思います。あのアニメ他にメガネのキャラいないし。ケンスケ? 誰それ?*1
 メガネさんがエヴァに乗ってるときに言った「すっげー痛い。けど、面白いからいい!」ってのは本当名台詞だと思います。多分、メガネさんはヤマアラシのジレンマみたいな状況に対してもこの台詞を言うでしょう。「すっげー痛い。けど、面白いからいい!」。他にも初号機が人から神になったのに対して、「モード反転、裏コード、ザ・ビースト」と人から獣になっていたあたり、とことんシンジ君の逆をいってるキャラだと感じました。
 現状のルートでは、シンジ君はホモにケツを掘られるか、近親相姦の二択しかないわけですが、やはり、それは色々危うい感じがするので、今作はアスカ以上に完全なる他者の象徴であるメガネの人とくっつくのが倫理的にも作品を破壊する上でも正しい終わり方ではないでしょうか。
 紅い波飛沫が立つ砂浜で殴りあうメガネとシンジ。
 割れるメガネのレンズ。飛び散るシンジの前歯。歪むメガネのフレーム。
 最終的には夕陽をバックにがっちり握手。そして流れる「Fly Me to the Moon」。
 あと、メガネさんのキャラ付けの一つに巨乳というものがあり、3回の登場シーン全てで胸の大きさを強調していましたが、モグダン綾波を見たあとでは普通サイズじゃんとしか思えません。今回のエヴァは過去の同人作品で既に同じような展開があったという意見も有りましたが、過去の同人と比較されるということは、このようなことに対しても対応しなければならないのです。綾波を越えるという事はモグダンやその他の同人作家達が書いてきた綾波を乗り越えるということになるのです。はたしてあのメガネにそれほどの地力はあるのでしょうか? 俺は大好きですが、他キャラとの絡みがほとんど無かったメガネが夏コミでどれだけ戦えるのでしょうか?
 で、アスカ。
 綾波とエレヴェーターの中で二人っきりになった時に「あなたには、エヴァに乗らない幸せがある。ほら、たとえばパチンコ化された作品の宣伝に全国のパチンコ屋を回るとかさ。正直ずっと声優で第一線で活躍するってのも大変よ。私もこの年でもう一回リナ=インバースをやるとは思わなかったもの。流石にあれはキツいっすわ。ほら、だから、あんたもとっととパチ屋に行ってサイン会でもしてこいよ」と言われたり、ことあるごとにパンツを見せたり、ブラとハーフパンツの上にエプロンを装着して無駄に前かがみになったり、エロスーツ着て三号機に乗ったり、全裸で風呂から出たりと色々サービスカットを披露したにもかかわらず、結局ラストのオールヌードの綾波に全て持っていかれ、「乳首を出していいのはメインヒロインだけなんだよ雑魚が! お前みたいな汚れ芸人は初号機にムシャムシャ食われてろ!!」と林原に一蹴され散々でしたが、ラストの眼帯のどや顔でだいぶ取り返した感はありました。おかげで、予告の綾波の後ろに何かちっちゃい綾波が数匹いたような気がしたのですが、皆触れてないので、俺の気のせいだと思ってたのに、もう一回見たらやっぱりいました。何あれ? イメージ映像?
 綾波はテレビ版や『序』ではクールビューティーキャラだったはずなのに、ゲンドウに怪しげな日本語で何度も質問する場面や「ぽかぽかする」という発言や包丁で手を切りまくっていたせいで、アホの子に見えました。包丁に馴れない内は指を切るのはしょうがないとしても、手の甲まで切るのはもっと基本的なところで刃物の使い方がなってないよなー。ってか、エヴァに出てる女性キャラは委員長を除けば皆料理が下手そうというか、彼女達は刃物を人を刺す道具か、手首を切る道具だとしか思ってないイメージがある。
 何だかんだで『破』のラストも『序』の時と同様、テレビ版に較べて男らしくなったシンジ君がかっこいい言葉で綾波口説き落とした後、ホモの人が意味ありげなことを言って、次回予告という形は変わってないので、『Q』もそんな感じになるのかなぁ。しかし、綾波ルートは近親相姦を避けられないし、劇場版の出番の少なさを考えるともう一回アスカというのも無さそうなので、意表をつく終り方としてはハッピーエンドと見せかけてやっぱりバッドエンドか夕陽の砂浜でメガネと殴り合いだと思います。意表をついた終わり方って大体の場合が失敗に終わりますよね。
 エヴァが出てるシーンはどこを切り取っても面白く、あれこそが「DVDを待とう」ではなくて、「もう一度劇場に行こう」と思わせた大きな要因でしたね。スクリーンで見るエヴァはデカかった。
 個人的には、初号機が走ってマッハの壁を越えるシーンが好きです。あれだけの大きさの人型ロボットが全力疾走すれば音の壁も越えるだろうし、その後衝撃波で車が吹っ飛んでいたりしたので、柳田理化雄先生もニッコリだと思いました。あと目からビーム。このご時世にあれだけ堂々と目からビームを出すなんて……。光子力やばい……熱海がなくなっちゃう……。
 ハッピーエンドのエヴァは同人で見たから別に良いという意見や今回の劇場版は以前の作品の二次創作でしかないという意見を見ましたが、前作で放置プレイをかました伏線の数々を今後の展開で回収できたら、その時点でエンターテインメントとしては大成功だよなー。過去の遺産を使って、それを万人向けのエンタメに再構成できたならその時点で充分勝ちですよね。ディケイドとか、マジンガーとか。特にエンタメであることを一度放棄したエヴァがもう一回それをやるってのは結構大きな意味があると思います。
 『Q』に関しては俺が見た幻覚でないならば、小さい綾波に期待したいです。眼帯や部外者のメガネはどうにでも出番を与えられるだろうけど、あの綾波が本編にどうかかわってくるかは全然想像できない……。綾波がたくさんいると聞いたシンジ君のイメージ映像あたりが妥当なのだろうが、はたしてしかし……。

*1:追記:ブクマで指摘もありましたが、ゲンドウはグラサンキャラなのでメガネ扱いしなくても何の問題もありませんし、リツコはたまにしかメガネをかけていないので、彼女をメガネというのははばかられます。しかし、日向マコトに関しては野郎の存在を完全に失念しておりました。忘れていたものはしょうがないので、このまま忘れたままでいようかと思います。