サマーウォーズ

 素晴らしい、そして、恐ろしい映画だった。
 この夏は四回ほど映画館に足を運んだが、その中でも二番目に良かった。
 ちなみに、四回のうち三回がヱヴァ破である。
 この映画の何が素晴らしいかって、ヒロインのカズマの可愛らしさにある。
 他にもヒロインっぽい棒読みのビッチがいたが、俺の記憶にはもはや欠片も残っていない。それぐらいカズマが可愛かった。
 まず、何が可愛いかって登場シーンから可愛い。
 この映画は、長野という人跡未踏の地に集まる大家族の生態を描いたものである。
 この連中は、婆さんの誕生日を祝う為、一年ぶりに集まり、皆和気藹々と食卓を囲んだり、一族のルーツを声高らかに語ったりしているのには、カズマだけはその輪にいない。
 何と、この娘は一人だけ別の部屋で持参のノーパソでネットゲームに興じているのである。
 この非コミュっぷりときたら!
 オタクは非コミュの女の子が大好きである。より正確には周囲の誰からも理解されない少女の魅力を、自分だけが理解しているというシチュエーションが大好きである。だってオタク特有の独占欲が満たされるもの。
 また、オタクは当然自身が非コミュなので、自然と非コミュの少女に自身を自己投影してしまう結果、自然と歪んだ自己愛が働いてしまう。そういったわけでオタクは非コミュの女の子が大好きである。
 また、このカズマきゅん、格好がエロい。 
 タンクトップである。
 思春期の少女のタンクトップは本気でエロい。
 タンクトップ特有の深い襟ぐりから胸が覗けたり、大きく開いた肩口から自然と横乳が見えそうになってしまう無防備さ。それにもかかわらず、子供から大人へと発達しつつある、自身の身体に対し無自覚な感じがエロさを助長させる。
 一人称が「ボク」なのもエロい。ボクっ娘は鉄板でエロい。
 また、台詞もエロい。劇中でトラブルに巻き込まれた主人公が、カズマにパソコンを借りようと頼むのだが、その時主人公に向かって言う台詞が、

「言い方がダメ。もっと取引先に言うみたいに言って」

 ついさっき会ったばかりの人間にこれである。
 谷村美月の声でこれである。
 エロすぎる。
 知り合ったばかりでこのような要求をしてくるんだったら、親しくなったら一体どんな要求をしてくるんだろうか。

「言い方がダメ。もっと奴隷がご主人様に哀願するみたいに言って」

とか

「言い方がダメ。もっと屠殺場に送られる豚が命乞いするみたいに泣き喚いて」

とか言ってくるのではないだろうか……どんだけエロいんだこの娘は。
 また、この娘、ネット上のハンドルネームが自身の名前にキングをつけた「キングカズマ」である。
 エロすぎる。
 冷静に考えて欲しい。
 「お前のハンドルネーム、明日から、『キング○○』な(○○には自分の本名を入れてみよう)」と言われたらどんな気分がするだろう。当然、はてなのidも『king-xx』である。(xxには自分の本名を入れてみよう)
 正直寒気がする。俺にはそんな名前でネットで何かを書いたり言ったりブクマしたりする勇気は無い。
 しかし、カズマきゅんは、そんなちっぽけな恐れなんて持たず、堂々と「キングカズマ」を名乗ってるのである。それも自発的に。しかも、その上そんな名前でネットの格闘ゲームのチャンピオンになってしまうのだ。本当にキングなのである。
 何だろう、このブレない真直ぐさ、色々エロすぎる。あと、女の子なのに、格闘ゲームのチャンピオンってのもエロい。 
 他にもカズマきゅんは一見クールそうに振舞っておきながら、大声を上げながらボロボロ涙を流したりと感情をむき出しにするシーンもあって、そのギャップがとにかくエロかったりする。
 しかし、そのエロさの反面、観客は話が進むにつれて、ある重大な事実、この映画でもっとも残酷な事実に直面せざるをえない。




「あれ? もしかして…………こいつ男じゃね?」




 そう、そうなのである。中性的な外見の上に、声が谷村美月なおかげで気づかなかったし、必死でボーイッシュな女性に違いないと自分に言い聞かせていたが、冷静に考えれば、カズマきゅんの言動はところどころ男のものである。そもそもカズマなんて名前の女性はあんまりいない。ちなみに漢字だと佳主馬である。ヤバい。どう考えても男だ、こいつ。
 しかし、世の中は広い。世間にはカズマって名前の女の子がいたっていい。何なら俺に将来娘が出来た時カズマって名づける。だから神様お願いします…………!
 そして、我々は直面する。
 ラストシーンで、男子学生服を着ているカズマの姿に……。
 その瞬間、映画の内容などには一切関係なく、いや、そもそもこの映画の内容の9割がカズマなのである。観客はこの救いようの無い展開に絶望するしかない。もう、エンドロールが流れて山下達郎が歌ってるけど、我々が突き落とされた絶望の闇の深さには歌詞など届かない。
 しかし、この絶望の闇に包まれた劇場の中で、己の脳裏に一筋の光が飛来する。




「…………別に男でもよくね?」




 まさか、まさかまさかまさか、この俺が。
 「ロリはありだけど、ショタとかマジ勘弁っすわー。LO毎月買ってるけど、ショタってマジキモくね?」と普段からのたまってる、この俺が。
 性癖がノーマルなことで知られる俺が、その堅苦しすぎるまでのノーマルな性癖ゆえに、「正座でオナニーとかしてそう」とまで言われるこの俺がである。
 「カズマきゅんのおちんちんだったら……僕舐めても良いよ」といつの間にか思ってしまうぐらい、恐ろしい少年なのである、このカズマは!!
 魔少年。まさに魔少年である。
 このカズマという魔少年を生み出した一点において、俺はこの『サマーウォーズ』という映画を高く評価する。
 高度なCGで描かれたネット空間OZとか田舎の雰囲気とか大家族という環境にしか見られない一瞬を上手に切り取ったワンカットとかそんなものはどうでもいい。
 俺はこのカズマというキャラクターを持ってして、『サマーウォーズ』を名作であり、傑作であると断言する。
 さて、俺にしては珍しく褒めまくったのに、何故か誰にとっても喜ばしくない感想になってしまったが、このように一見リア充向け映画の『サマーウォーズ』だって楽しもうと思えば、如何様にも楽しめるというのがどこかの非モテに伝わっていたら、これ幸いである。
 カズマきゅん、可愛い。

自身の感想と似通っていた為、参考にさせていただいた感想。

http://d.hatena.ne.jp/ruitakato/20090727
『サマーウォーズ』を見た。心の動きを綴る。(後半ネタバレあり) - やや最果てのブログ