アラン・ムーアの『TOP10』がヤクイ!

 10年に1度のアラン・ムーアバブルが到来し、これまで原書でしか読めなかったムーア作品が続々翻訳される昨今、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 しかし、blog検索でアラン・ムーアを検索してみりゃ、どいつもこいつも『フロム・ヘル』、『フロム・ヘル』。
 うんざりだ! 違うだろ! あんな何年経ってもビレバンに大量に積んでそうな本は良いんだよ!
 そんなことより、『TOP10』だ!
 一年半後には絶版確定で、定価で買うのが不可能間違い無しの大傑作、『TOP10』の話をしよう。
 『フロム・ヘル』の話は二年後、三年後も出来るが、『TOP10』の話は今しか出来ない。何故なら『TOP10』は今しか手に入らないから……。二年後に話を振ったところで、どこ行っても買えなさそうだから……。
 

  • 大雑把なあらすじ

 第2次大戦後、巷では、続々とスーパーパワーを持ったヒーロー、ヒロイン、極悪人が登場し、「こいつはヤクイぜ!」と思った偉い人たちが、そういう五体超満足な人たちを一箇所に隔離するため、元ナチスの天才科学者がデザインした都市を用意したものの、そこに住み着いた人たちが、ポコポコ子供を産んだら、そのガキどもも当然スーパーパワーを持ってたりするせいで、スーパーヒーローの人口爆発は起こるわ、それに伴って犯罪活動も活発になるわで、再び「こいつはヤクイぜ!」と思った偉い人たちが、平行世界の人々に頼んで、警察署を作ってもらったが、そんな都市での取り締まり活動は、カタギの人間にはやってられないので、そこで働く警察官達もスーパーパワーを持っていて、このお話はそんなスーパーパワーを持った警察の人達がスーパーパワーを持った悪人たちを捕まえたり、マッタリと日常を送ったりする話です。



 というわけで、登場人物全員が何らかの特殊能力の持ち主という、一部の人はそれだけでキュンキュンする設定の本作品は、警察署を舞台に、個性豊かなメンバー(核爆弾を常備するおばちゃん、全裸女性アンドロイド、その全裸を見て鼻を濡らす天才シェパード、マザコン中年カウボーイ)が個性豊かな犯罪者(巨大な虫の姿をした宇宙的ポルノ女優、怪獣、神、スーパー家鼠軍団、サンタクロース、JLA)を相手に大捕物を繰り広げるというのだけでも、色々過剰気味なのに、脇役も「禅があるから大丈夫だよ!」と目隠しをして、ガンガン交通事故を起こす、ゼン・タクシーや、二本足で歩きしっかりスーツを着こなす鮫の弁護士など、無駄にアクの強い連中ばかりだし、背景描写においても、「私はサーキュレーション・ウォーズの犠牲者です」という看板を持った足の無い乞食や、テレポーテーションに失敗して、ザ・フライ状態になった子供など、遊び心満点で素敵で、アラン・ムーア先生言うところの「どんなに超能力があろうとも・どんな派手な格好をしようとも、マヌケはマヌケでしかない」という言葉を見事に体現した作品となっております。 
 また、設定は突拍子も無いくせに、物語の大枠としては、それぞれ別の刑事達が追っていた、『フロム・ヘル』でもおなじみの娼婦連続殺人や、麻薬密造事件が、最終的に一つの線にまとまり、驚愕かつブラックな真相にたどり着くと言う、警察ドラマの王道を行く展開という手堅いものになっております。
 『フロム・ヘル』もそうだし、『ウォッチメン』に『V フォー・ヴェンデッタ』もそうだったけど、最近邦訳されたムーアの作品ってのは全体的に重苦しい作品が多いけれど、これは基本的に明るいノリで、出版社曰く、「白ムーアの代表作」なんて言った感じなのでアメコミは苦手って人も是非読もう。
 当然、値段の高さに尻込みしてしまう人もいるかもしれないし、買ったはいいけど、「やっぱり自分とは合わなかった! つまらなかった!」ということになるかもしれないけど、安心してください。二年か三年押入れの奥で寝かせておけば、遅れてきたアメコミファンに高値で売りつけることができるので、元は取れる仕組みになっています。嘘だと思うなら、アマゾンのこれまでのアラン・ムーア作品の値段を見てごらん!
 そんなわけで、『TOP10』は大変ヤクイので、皆読めば良いし、万が一、この本が売れに売れた場合は、続きも邦訳されるかもしれないよ! ってか、俺が続きを読みたいのでたくさん売れて欲しいです、ガチで。

関連リンク
http://www.planetcomics.jp/index.php?itemid=1191

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