一票を投じることの意味について考えてみた。

 http://www.whitestyle00.com/boku1sen/という記事が話題になっており、ブコメでは例によって、「ゴミみたいなブログ書いてる暇あるなら選挙行けばいいのにな」「おまえは選挙に行かなくていいから、とりあえず能書きをたれるのをやめろ」「ウジウジ小学生みたいな言い訳書いてて、男ならもっとしっかりしろよ」と散々な物言いであり、「はてなってクソだわ。やっぱりさるさる日記がナンバーワン!」という気持ちになってしまうし、そもそも「イケダハヤトを天才とか言っている人はちょっと……ま、話題になって良かったね」で済ませていい話かもしれないのだが、blogの内容自体は彼に限らず選挙に行かない若者について幅広く当てはまる内容かもしれないので、一応成人してからはそれなりに選挙に行っている僕の思うところを書いていきたい。

政治に関して無関心な訳ではない

僕は全く政治に興味が無いわけではない。
今回の参議院議員選挙も、憲法改正において重要な選挙だったという事も、何となく理解したつもりではあった。
ただ、重要な選挙だとしても、僕の一票で何かが変わるとは到底思えなかったのである。

 たとえば、自由民権運動だったり、アメリカでの黒人投票権法成立の過程を引き合いに出して、選挙権の大事さを説いてみても彼の考え方に大して影響を与えることはないだろう。
 今の若者にすれば選挙権など、蛇口を捻れば水が出てきたり、当たり前に空気が吸えたりするようなもので、そのありがたみを実感するのはなかなか難しいのではないだろうか。
 僕だって子供の頃は、お爺ちゃんに戦時中はいつも食料が不足していた。毎日三食食べられる今の世の中がどれだけありがたいかという話を聞かされても、その日の食卓にホウレンソウのお浸しがあがれば、「これ食いたくねえな……」とナチュラルに思ったものだ。
 そのような中で一票の価値というものをどのように説明するべきか。
 ここで古くから知られている有名なパラドックス、ハゲ頭のパラドックスを紹介しよう。

「髪の毛が一本もない人はハゲである」(前提1)
「ハゲの人に髪の毛を一本足してもハゲである」(前提2)
ここで前提1に前提2を繰り返し適用していく(つまりツルッパゲの人に髪の毛を一本ずつ足していく)。そして次の結論を得る。

「よって全ての人はハゲである」(結論)

 違う、そんなことはない。世の中にハゲじゃない人はいっぱいいる。少なくとも俺はハゲではない。床屋さんとかで後ろ髪切り終わった後に、「こんな感じでいいですかあ」って後頭部を鏡に映されるたびに不安と恐怖で少し吐きそうになるけど、俺はハゲじゃない。あと最近のエレベーターで、防犯カメラで上部からエレベーター内部を映した映像をリアルタイムで見れるやつあるじゃないですか、あれ見る時もすげー怖くて心臓がバクバクする。
 いや、その話はよくてパラドックスの話である。
 ハゲに髪の毛一本加えたとしても、ハゲはハゲでしかなくとても無力という話だが、そういう無力な一本一本が集まることで我々はハゲじゃないと胸を張って言えるのである。
 このように一見無力な一本一本が頭髪の持ち主に大きな影響を与える……そう、そしてそれは君が持つ一票も同じさ!という話なのだけど、こういう上手いこと言おうとして、全く言えてないたとえ話が出た時点で、大半の人はウィンドウを閉じるという統計の結果が出ているので、そうなる前に次の話題に移りたい。違うんだ。僕は髪の毛とかじゃなくてもっと生産的な話がしたいんだ。

中途半端な興味だと理解しきれない部分が多い

正直な話、政治にちょっと興味がある程度だと、政治に関して理解出来ない部分が多すぎる。
情報収集と言えば、テレビとインターネットが主になるとは思うが、どこを見ても「何が正解」なのかが全く分からない。
これは僕の情報収集における、リテラシーが足りなすぎるのかもしれないが、本当にそうなのだ。
今年から18歳以上の若者にも選挙権が与えられ、高校の授業で色々な議論がなされているようだが、正直あれは羨ましいと思った。
僕は政治に興味がありながらも、選挙に参加をしないのは、政治を完全に理解出来ていないからこそなのかもしれない。

 これに関しては、昔の偉い人の言葉を紹介したい。

 選挙権を与えられた以上、投票する権利は18歳以上の国民全員に文句なしに与えられており、別に政治を完全に理解していなかろうが、誰に恥じるなく投票していいのだ。
 むしろ自分が完璧に理解する日が来ると信じて投票に行かない方が不味い。
 かく言う僕も大して政治に興味があるとは言えない人間である。それでも目に入る情報――テレビ見たり、新聞読んだり、ネットでポチポチしたりして――を集め、自分が投票することで最終的に一番自分に利益を還元してくれるだろう人を選んで投票している。だが、その熱心さは「今晩は何で致すか……」とDMMでサンプルを観てる時の十分の一にも及ばない。
 そんな適当でいいのかと言われるかもしれないが、それが民主主義というものである。
 まあ、遠くない将来に起こるであろう、自民党憲法改正に対して真剣に頭を悩ませる憲法学者にも、「このガチャには必勝法がある……!」とか言って毎日特定の条件でソシャゲーのガチャを回し続ける狂人にも、同じ一票が与えられており、それこそが民主主義の最大の美点であり、欠点であるのだが、まあそもそも政治に正解なんてない。
 人生に正解はなく、政治にも正解はない(ドヤ顔)
 インターネットにはたまに「自民党に入れるとはお前はきちがいか!?」「お前らが民主党に入れたせいで世の中は悪くなった」などとのたまう人もいるが、そういう人を観かけたら、「この人は民主主義というものをわかっていないのだな」と思ってスルーしておこう。

選挙に行かない人は文句を言う権利がない

「選挙に行かないんだったら文句を言う権利なんてない!」
これって良く言われる事だけど、僕はこの主張がそもそも理解出来ないし、別になんの文句も言う気もない。
自分が選挙に行ったとしても結果が変わらないのだから、どんな結果が出ようと受け入れるしかないのだ。
それよりも、選挙に行った人が結果を見て、「こんなの民主主義じゃない!」という文句を言っている人はみっともないとすら思えるが。
選挙の結果こそが民意で、民主主義なんじゃないのか。

 別に投票に行かずに政治に文句を言う権利はあるけど、自身が最小の労力で行える政治活動であるところの投票すら放棄しときながら、文句言うのは権利うんぬんというよりも人としてダサいと思いますね。
 ま、これに関しては各人の美学の問題かもしれませんが。
 また、結果がアレだとしても必ずしも受け入れずにブーたれる権利は十二分に保障されており、だからこそ多くの衆議院は4年持たずに解散するのです。
 あと、後半についてはわりと同意です。

政治を完璧に理解していないと叩かれる

これは特にネット上で見られる事なのだが、政治を完璧に理解出来ていないものが何かを質問すると叩かれる風潮がある。
以前、某タレントが「国の借金は増えていっているのに、何故公務員の給料はあがるのか?」とTwitterで呟いていた事があった。
それに対して、周りから総叩きにあっていたのである。
でも、そのタレント以上に政治を理解出来ていない若者(大人)は大量にいると思っているし、その程度の質問をすると総叩きにあう時代と考えると、若者が政治に参加したくなくなるのも分からないだろうか。
完璧に理解していない人がほとんどで、だからこそ質問をするのに、「そんな事も分からないの?」と返されたらもうそこで終わりじゃないか。
もちろん、フォロワーも大量で影響力のある人物が、誤解を与えるような事を呟いた事に対して、総叩きにあっていたのかもしれないが、周りが丁寧に解説していれば、きちんとした理解を改めて呟くのかもしれないのに。

 そういう危険性がないとは言いませんが、政治を完璧には理解するというのは基本不可能です。
 もし誰もが政治を完璧に理解していたら、選挙のたびに池上彰がもてはやされることはありません。まあそういうことです。
 またこの件に関しては、批判的なリプライが大量に届く一方で、ちゃんと国の借金の仕組みを丁寧に説明するようなリプライもあったので、世の中には優しい人もいるということです。
 そして貴方の質問に「そんな事も分からないの?」と返す大人がいたら、「貴方のような人間に聴いた僕が馬鹿でした」と言って引き下がりましょう。そのような人間とは距離を遠ざけるのが賢明です。
 とはいえ、それでもそういう対応は傷つくというのであれば、自分で調べるのが一番という気もしますが、せっかくのインターネットだし、やっぱ増田ですよ、増田! はてな匿名ダイアリー
 あいつら、馬鹿だから! ダボハゼってあいつらのために作られた言葉だから!!
 こっちが軽い気持ちで適当なこと書くと、顔真っ赤にして反論と称してトラバとブクマで大量に説明してくれっから!
 匿名だからこっちのプライドが傷つくこともないし、増田マジおすすめ!!

投票したい人も別にいない

これを言ったら本当に失礼な話かもしれないが、選挙に行った人は、支持している人が当選してどんな事をしてくれるかを完璧に理解しているのだろうか?
今回元タレントが当選したみたいだが、演説を聞いてる限り、夢だ希望だ諦めないだ言ってるが、どんな政策を掲げていて、当選したらこんな事をしてくれそうだなとは思えなかった。
比例選なので、ちょっと違うかもしれないけど。
演説で土下座をしている候補者なんかもいたが、あんなの見ても引いてしまうだけだった。
そもそも、演説では「高齢者の生きやすい社会に!」とか「若者が夢を持てる日本に!」なんて言うけど、その人が当選後本気で動いて日本を変えよう!という気があるとも思えない。
特に、こういう考えが出てきたのは辞めていった都知事の影響もあるかもしれない。

 ぶっちゃけ白紙でもいいです(断言)
 誰に入れるのが正解かとは正直誰にも言えないし、長年選挙に行ってれば、「やっぱあの人に入れるんじゃなかったか……」と思うことも一回や二回ぐらいはあるでしょう。
 世の中ってそういうもんです。
 それはそれとして、世代別投票率というのはそれなりに重要でして、もし明日から50代以上の投票率が0%になり、10代20代の投票率が100%になれば、政治家や政党はガンガン若者向けの政策を発表するでしょう。
 これはあくまで極論でこんな都合よくことが進むはずないのですが、だとしても、ほんのわずか、たとえ大河の一滴にすぎないとしても、貴方が投票所に赴いて投票活動を行ったということが貴方の世代にとって大事なのです。
 白紙投票は消極的に与党を利することに繋がるのでよろしくない。という反論もあるかもしれませんが、まあ結局投票しないのであれば結果的に与党を利することには変わりません。だったら投票所に行って、貴方の世代が政治家に目を向けてもらった方がよろしいでしょう。
 真面目に考えて自分で選んで投票することが本当は1番なんですけどね。

人間は結局自分が第一なのではないか

僕は東京都に住んでいるが、今都知事が二人連続で、「お金絡み」の事が原因で辞めていった。
確かに、ちょっと失望してはいるが、人間なのだからしょうがない事なのかもしれないと思っている。
結局、人間はみんな自分が第一なのではないかと思う。
選挙時、候補者の時点ではみんな「国の為に!」なんて綺麗事言うけど、結局当選後はお金にまみれて国の為に動いているのか?と疑問なのである。
もちろん、国会議員のお仕事は大変なのかもしれないが、どんどん税金が上がっていく中で、そういったスキャンダルが明るみに出ると、もう諦めるしかないよなと思ってしまう。

 しゃーない。
 人間とはそういうものです。理想やロマンだけではご飯は食べてはいけないのです。
 国というのは結局は一人一人の人間の集合体です。
 なので、貴方も国にとって良い投票などと考えず、自分にとって一番良い政策を実施してくれそうな政治家、政党を選びましょう。
 

選挙に行かなくても最悪の事態が起こるとは思えない

ここ最近特に選挙が盛り上がっているように見えるのは、やはり憲法改正についてなのであると思っている。
憲法が改正されると戦争が始まってしまう!」と主張している人もいるが、さすがにそれはないだろうと思ってしまう。
極論で主張して、それを阻止する為に投票しろと言うのはやっぱりおかしい気がするし、どう考えても自発的に戦争を本気で起こす気でいるんだったら、国民全体が反対するだろう。
無責任な話かもしれないが、僕が選挙に行かない理由のひとつとして、「最悪の事態が起きるなら全力で僕以外の国民が止めるのだろう」という点があるのだと思う。
ボロクソに叩かれるかもしれないが、選挙に行かない若者の多くはそうなんじゃないだろうか。

 確かに、最悪の事態はそう簡単に起こりません。朝、枕に髪の毛が数本ついていたところで、フサフサの僕はやっぱりフサフサです!
 しかし、そうした積み重ねが毎日毎月毎年続くことによって……。
 そういうわけなので、最悪の事態が起きるかどうかはわかりませんが、当たり前な話、君以外の人間が君と同じことを考えちゃうと誰も止めなくなってしまいます。
 また、世の中の物事において「俺以外の誰かがやってくれるだろう」というのは、だいたい一番楽な解決手段で僕もよく採用しているのですが、唯一のリスクとして「俺以外も誰もやってくれなかった」場合、高確率で最悪の事態を引き起こします。起きた。
 まあ、何もたった一人でダムをせき止めろと無茶振りしているわけではなく、ちょっと近所の投票所まで足を延ばすぐらいなので(もちろんそれこそが死ぬほど面倒くさいということは否定しませんが)、だったら投票して最悪が訪れる可能性を少しでも減らした方が良いでしょうという話です。

ネット上では、匿名だからなのか分からないが、とりあえず叩けば良いという風潮があるが、選挙に行かない若者をただ叩いたって何も起きない。

 というわけで、今回は僕なりに柔らかい言葉で説明してみたつもりですが、いかがでしたでしょうか?
 これ読んで、「いや、ハゲ頭のパラドックスとか言われても……」と返されたら、「そうだな俺が悪かったな」としか言いようがないのですが、もし、これを読んだ若者が「じゃあとりあえず次の選挙にでも行ってみるか」と考えてくれるようでしたら、僕もFGOの新イベントを放置してこんな文章を書いた甲斐があるというものです。僕はね、ガチャで源頼光を絶対に手に入れるんだ……世間の連中は馬鹿にしてるけどFGOのガチャにはね、必勝法があるんだよ……本当だよ……。
 それでは皆様また来週。