マジコン・アンダーグラウンド

 マジコンを違法化して規制した場合、一体マジコンがどのように凶悪化するのかを僕なりに考えてみました。

scene1 
四条通り 夜
パトカーのサイレンが鳴り響き、スーツ姿の男(警部)と制服警官達が通行人を尋問する。 

警官A「おい、鞄の中を見せてみろ!」
警官B「黙っていればすぐ終わる!」
人々が粛々と所持品検査を受ける中、一人の男が走って逃げ出す
スーツ姿の男「貴様待て!……追え、奴を追うんだ!!」
逃げる男をスーツ姿の男と警官数名が追いかける。男が路地裏に逃げ込むも行き止まり。警官達から暴行を加えられ鞄を奪われる。
鞄を探っていた警官が、スーツ姿の男に向かって報告する。
警官C「警部、カバンからマジコンが見つかりました。」
警部「やはり持っていたか」
震えながら地面にうずくまる男。涙声で訴える。
男「すいませんでした……! 許してくださいっ! お願いです……!!」
警部、ニッコリ微笑んだ後、男の腹を蹴り上げる。
男が泣き叫ぶが、気にせず何度も蹴り上げる。
警部「マジコンはねぇ、持ってるだけでも犯罪になるんだよ。特に……ここ京都ではね」


scene2
○ネットカフェ 深夜
3畳ほどの個室の中で二人の男が向かい合って座る。机の上には3機のマジコン。
周りの部屋からいびきが響く中で、声を潜めて話し合う二人。

伊園「本物かよ、これ」
中島「ああ、3つとも正真正銘メイドインチャイナ。保証書もついてる」
伊園「俺たち、これでまた自作ゲームが作れるんだな」
中島「そう。それにあの『ヒーザーン』がプレイできるかもしれない」
伊園「マジかよっ、とうとうあの伝説がプレイできるのか。それで、これ三つあるけど、どうするんだ?」
中島「一つは俺、一つはお前。で、もう一つは……そうだな転売するか」
伊園「売るってお前っ! これが他の人間の手に渡ったら違法コピーに使われるかもしれないんだぞ! 俺たちはそんなことの為にマジコンを手に入れたんじゃないだろ!」
中島、伊園の顔を無言で眺める。
伊園「な、何だよ」
中島「なぁ、伊園。俺たちもいい加減子供じゃないんだから、そういう話はよさないか」
伊園「どういう意味だよ」
伊園が中島をにらみ返す。
中島「俺はタダでこいつを手に入れたわけじゃないんだ。それに俺たちがゲームを作るのにだって金がいる。奇麗事だけじゃ世の中渡っていけないんだよ」
口ごもる伊園。その瞬間、個室のドアがノックされる。
二人とも表情を凍らせてドアに向かって振り向く


scene3
ニンテンドービル最上階 夜
40平方メートル程の部屋。
ドアから正面の壁は一面窓となっており、その手前には巨大な木製の机。
机の上にはトロフィーが数個飾ってある。壁一面の窓から夜景を眺める宮本。
ノックの音に振り向く。
宮本「おう、入っていいで」
若い女(秘書)が、緊張しがちな若い社員を数名連れて部屋に入ってくる。
秘書「宮本社長失礼します」
宮本「おう、お前らが今年の新入社員か」
社員が皆背筋を伸ばし、気をつけの姿勢に。
一人がその場で叫ぶ。
社員A「は、はい! 自分は幼い頃から宮本社長に憧れており……!」
宮本「ええねん、ええねん、そんな固くならんでも。それより、なぁ、見てみい」
そう言って、窓の外に手を向ける。
宮本「この窓から見える土地、ビル、会社、全部全部ニンテンドーのもんや」
新入社員たち、唾を飲む。
宮本「花札会社だったうちがこんだけデカくなったのも、全部ゲームのおかげや。最初は、そんなガキの遊びシコシコ作って何になるねんって馬鹿にされたもんや。けどなぁ、今じゃ、誰もうちらを馬鹿にできんようになった」
聞き入る社員。
宮本「それでうちらが必死になって何十年もゲーム作って、認められた。そしたらなぁ、世間じゃマジコンなんていうタダでゲームがやりたい放題のツール作る奴らが現われおった。これじゃあうちは商売上がったりや」
そういって声高らかに笑う宮本。
つられて一緒に笑う社員A
宮本さらに大きく笑うと、マリオのトロフィーを手に持つ。
宮本「何がおかしいんじゃ!!」
マリオのトロフィーで社員Aの頭を思いっきりぶん殴る。
社員Aその場で倒れて微動だにしない。
新入社員一同、恐怖の面持ちに。それを見て口端を吊上げる秘書。
赤く染まったマリオのトロフィーを片手に宮本は語り続ける。
宮本「うちらが今日までやって来れたのはなぁ、ただゲームを作ってただけやからちゃう。今までニンテンドーに刃向かってきた奴らを皆叩き潰したからや。セガの鈴木もソニー久夛良木もみんなみんな潰してやったわ」
新入社員たちひきつった笑みを浮かべる。
宮本「だからなぁ、もし、この京都でマジコンなんて持ってる奴がおったらなぁ…………五体ばらして四条河原に流してやるでぇ」
そこまで言って満足そうに笑う宮本
宮本「ほな、お前ら永谷園のお茶漬けでも食うてくか?」


scene4
○鴨川を渡る橋の下 昼
少年がホームレスの老人にパンを渡す。
凄い勢いでパンを食べる老人。
老人「すまんのう、ここ三日何も食べてなくて、本気で死ぬところじゃったわい」
少年「別にいいよ、そんなの。給食で残したやつだし。それより爺さんこんなところで何やってんの?」
老人「ちょっと、今まで住んでたところにおれなくなってな」
呆れ顔で老人を見る少年。
少年「家賃が払えなくなったとか」
老人「そうそう、そんなところじゃ。それより食べ物のお礼に何かしなくちゃのう」
少年「だからいいって。給食の残りだしさ」
そう言いながらもまんざらではない顔をする少年。
その様子を見て老人、懐から出したSDカードを渡す。
少年「何これ、エロい画像でも入ってるの?」
老人「そうじゃない、こいつにはな」
そう言って薄気味悪い笑顔になる老人。
老人「どこにも売ってないゲームが入ってるんじゃ」


みたいなことになるので、マジコンは違法化してはいけないとおもいましたが、別にマジコンを違法化したぐらいではそこまでならないよといわれたので、やっぱり違法化してよいとおもいました。おしまい。