マリオの映画どう? 俺は普通。

 みんな大好きマリオの映画を観たわけですよ。

 俺がわざわざblogっていう旧人類の文明を持ち出したってことは当然の如くネタバレするんで、よろしくね。

 この映画の話をするためには、まず自身がマリオを好きかどうかを最初に書かなければいけない。マリオ映画感想を書くための踏み絵だ。

 マリオを好きだろうが嫌いだろうが知ってようが知らなかろうが、とりあえずそのことを書かなければいけない。理不尽な話であるが世間がマリオ映画の感想に求めているのは何よりもそこなので仕方がない。

 で、まあ俺は結構マリオを好きな方である。子供の頃はちゃんと実写版の映画を観に行ったし、PSでもサターンでもなく64を買ってもらったし、スマブラで一番最初にマリオをVIPに入れるぐらいにはマリオが好きである。

 俺がキノコをちゃんと食べられるのもマリオの影響である。将棋の藤井六冠はキノコが嫌いなことで有名だが、将棋なんかやらせず無理やりファミコンをやらせていればしっかりキノコ好きになったに違いない。マリオは食育にも効果がある。

 それで肝心の映画の話なんだけど、ぶっちゃけた話、「もっと上手くやれんかったかなあ……」ってのが第一感である。いや、面白かったよ。映画の大スクリーンでちゃんとマリオがマリオっぽいアクションで大活躍してるんだもの。そりゃマリオファンが見たら面白いだろう。

 マリオファンが見て楽しめたならその時点で大成功といっていいだろう。何せマリオファンは世界中に遍在する。実際興業的にも大成功である。

 でもまあ俺の中で色々と釈然としないものがあって、それが何に起因するかというと、ゲームを2時間の映画に落とし込もうとした結果の不自然さではないだろうか。

 根本的にスーパーマリオというゲームには大したストーリーはない。

 ピーチ姫がクッパにさらわれてマリオが姫を助けに行くというただそれだけである。当然、それをそのまま映画にしても成立してないので、本作は周囲から見下される冴えない配管工の兄弟が偶然キノコ王国に迷い込み、そこでの大冒険を経て、最終的に世間から承認を得るといういかにもハリウッド映画らしいストーリーラインで作られている。余談ではあるが、このストーリー構造は大体『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』と一緒である。世間では失敗作扱いされる『魔界帝国の女神』であるが、我々はもうちょっと優しくしてあげてもいいのかもしれない。

 で、映画化するために付け加えられた序盤の配管工パートなのだが、これの違和感がすごい。確かにマリオが配管工をやっているという設定は不動のものである。でも我々はマリオが配管工として活躍するゲームを知らない。医者のマリオは知ってる、ゴルファーのマリオも知っている。でも配管工としてのマリオはまったく知らないのだ。俺はマリオを動かして、集合住宅のポストにマグネット式の広告を投げ込んだり、水漏れやトイレのつまりを修理して18万円ぐらい請求したことはない。つまりちゃんと配管工をしているマリオというのは完全な未知の存在であって、その違和感が強かった。

 水漏れ修理の最中に犬に追われてドタバタしているのは、完全にただのおっさんであって、俺の知っているスーパースターのマリオとは言えない。少なくとも俺はそんな気持ちになった。

 この序盤の配管工のエピソードが伏線になって、終盤で大きな意味を持つならあのシーンにも意味はあったと言えるだろう。でもそんなことはないのである。本作は配管工要素が全く活かされていないのだ。

 もしマリオが犬に襲われるシーンで、POWをぶん殴ってひっくり返った犬を蹴飛ばしたりしていれば「凄い! ちゃんとマリオしている!」と感動したかもしれないし、あるいは配管工として日夜下水道の中で蟹を蹴り飛ばす描写があれば「この日々の活動が強靭な脚力を生み、キノコ王国での活動に繋がったのだろう……」なんて納得もあったかもしれない。でもそういうことはないので、この配管工としての仕事描写が完全に後の展開に繋がってないのだ。

 そして本作のストーリーは一事が万事こんな感じだ。キノコ王国に行ったマリオはピーチ姫の下でアスレチックステージで訓練を積むわけなのだが、その後そこまでアスレチックな場面は出てこなくて、あの訓練が役に立ってる感じがない。あの訓練があるからこそ、マリオはドンキーやクッパと戦えるぐらい強くなったと言えるかもしれないが、最終盤で何の訓練もしてないルイージもマリオと同じように機敏に動けてたしなあ……。

 それ以外でもクッパ軍団に対抗するには戦力が足りないからと、コング軍団に助けを求めに行ったのにこのコング軍団はドンキーコングを除けば大して活躍もしないまま退場していく。

 最終的にマリオがクッパを倒して家族やブルックリンの住人から喝采を受ける場面でも「いや、そういう形の承認でいいなら配管工要素マジでいらないじゃん」みたいなことを思ってしまう。

 で、問題なのがストーリーの繋がりは雑なんだけど、別につまらなくはないのである。マリオがアスレチックステージで何度も失敗しながらゴールを目指すのは楽しいし、コングの国に行ったマリオがドンキーとスマブラっぽい肉弾戦を繰り広げ、レインボーロードをカートで疾走するのも実に爽快だ。そう、マリオファンはこういう映画を望んでいたのだ。

 でも面白いからこそもっと何とかできたんじゃないかと思うわけで、マリオファンが喜ぶシーンを詰め込むだけじゃなくて、もっとマリオファン以外も楽しめる映画にはできなかったのかなあとは思う。俺が真に望んでたマリオ映画というのはマリオファンだけじゃなくて、マリオを知らない人でも手に汗握って楽しめるような映画だったのだ。だってマリオだぜ? それぐらいのスケールの作品になってほしいじゃん!

 あとピーチ姫は愛嬌豊かな感じにしたかったんだろうけど、もうちょっと美人にしてほしかった……。

 とはいえ、ファンが観たかったものを観せてくれたって時点で『魔界帝国の女神』と比べれば大成功だしな。当時マリオが映画化するって聞いて、少年たちが期待したのはあんなクリボーヨッシーであるはずはないし……。

 それと映画の途中でマリオがキノコをあんまり好きじゃないというシーンで、俺の人生の7割ぐらいが裏切られた気もした。俺もマリオなんかやらないで将棋をやってればよかった……。