自由主義少女リベ子ちゃん 広島死闘篇

前回:自由主義少女リベ子ちゃん・リブート - 脳髄にアイスピック
島耕作の新シリーズは『事件簿』……やはり、あれかしら、今の東芝の大赤字も地獄の奇術師のせいにされるのかしら……」
「リベ子ちゃん! シマコーに出てくる会社『初芝』のモデルは作者・弘兼憲史が漫画家になる前に勤めていた松下電器産業(現・パナソニック)で、東芝とは一切関係ないよ!」
「漢字の字面じゃなくて母音に注目するのが大切なのよね……ってあなたは私の使い魔にして、自宅のトイレに置いておきたいマンガ一位は『三国志』ではなく『黄昏流星群』だと主張してやまないラルじゃない!」
「連載形式の作品よりも、一話完結の漫画の方が後腐れなく席を立てる……素人さんにはわからないかもしれないがね。ってそんなことより大変なんだよ、これを見てよ、これ!」
「ほーん、ここ最近テレビの面白ニュース枠として消費されている前川元事務次官の話じゃないの。なになに、出会い系バーに通い詰めだったけど目的は本人の説明通り、貧困調査で実は女の子の手もつないだことがなかった……まあ、いい話じゃないの」
全っ然、よくねえよ!
「ヒィッ」
「こちとら出会い系バーの報道が始まった時点で、どこの店なのか、お店の入場料はいくらなのか、一見さんでも入れるのか、働いてる女の子は本当に現役のJKなのか、いくらぐらい払えばヤラせてもらえるのか、お金を払って一緒にホテルに行こうとしたら、後ろから怖いお兄さんが来たりしないのかとか、色々気になって加計学園どころじゃないんだよ! ってか、あの新大久保の店絶対許せねえからな!
「落ち着いて、ラル! あなたが喋れば喋るほど、あなたとこのサイトの社会的地位が危ういわ!」
「そのくせ、はてなブックマークじゃ、こいつのことを見直したのなんだの、聖人扱いされだしちょる……そんなこと言われたら通る筋も通らんじゃないの! 大体手をつないだことがないから聖人だなんて言ったら、僕だってお金を払わないで女の子と手を握ったことなんて一度もないし、イソジンなしで女の子とキスしたことだって一度もないよ! もっとみんな僕のことを崇め奉れよ!」
「落ち着いてラル、わかったわかった私が落としどころをでっち上げるから、それ以上そのドブみたいな臭いのする口を開かないで! ポクポクポクポク…………ホイップ・ステップ・リベラール!」
「あ、なんか最近のプリキュアで聞いたような気がするやつだ! リベ子ちゃんも最近のトレンドを取り入れようと色々必死なんだ!」
「良いおとなとしてこの問題にどう対処するべきかわかったわ、ラル」
「よっしゃ! じゃあリベラルと言い張ってるだけのただただ反道徳的なだけのいつものやつをやっちゃってくれよ!」
是々非々
「…………はぁ」
「当たり前の話だけど、結局今回一番問題にするべきは前川元事務次官が証言した、『総理のご意向』文書が実在するか否かで、それ以外は本筋じゃないでしょ」
「いや、このタイミングでこんな報道がされるあたり、政権がメディアに何らかの圧力をかけたとか、そういう切り口だって」
「もちろんそれはそれで問題視する必要があるわ。だけど、こういう物事は論点を一つ一つ分けて考えるのが大事なの。文書の有無、メディアの報道、過去の天下り問題、出会い系バー通い、これらの話は全て前川元事務官という人間から一本の線でつながっているように見えて、全て別の話でしょ。別に前川元事務次官が実際に女子高生を買春していたからといっても加計学園に関する文書はでっち上げということにはならないし、逆に加計学園に関する正義の告発者であったとしても天下りを斡旋していたという事実は覆らない。だから是々非々」
普通ですね
「そういう意味では、個人の私的な行動を捕まえて、聖人だと褒め称えるのもロリコン糞親父と罵るのも、双方ともに本筋から離れたしょうもない話題だとあたしゃ思いますけどね」
出た! 妖怪どっちもどっちだ! でもでも個人の名誉の回復だってあるんだよ!」
「いや、名誉って言ってもさあ、だって出会い系バーに通い詰めていたってのは事実なんでしょ? さっきセブンでおにぎり買うついでに(今だけ百円!)文春立ち読みしてきたけど、そもそも貧困調査が目的なら同じ女性と30回も会う必要なくね?とか、最初に出会った女の子が6年前ってこの手の店に通う期間、流石に長くない?とか、女子の貧困を気にするのも結構ですが男子の貧困についてはどうお思いで?とか文春の記事の〆の一文、明らかに皮肉じゃなかった?とか、まあ、いろいろな論点があって、そこらへん全部無視して良い人扱いするのはさあ……けど、ほらあたし個人の恋愛や性行為は法に触れない範疇ならば好きにすればってスタンスだから」
「ちょっとリベラルっぽい!」
「これだけ色々根掘り葉掘りされているのに、それでも現時点で買春をしたっていう具体的な証拠や証言が出てこない時点で、本当に法や条例には触れることはやってなかったんだろうなあとも思いますけど、本番してないから偉いって理屈ならキャバクラやフィリピンパブに通ってるオッサンとどれだけ差があるのかって話じゃない。だけど、そういう性道徳や倫理的な部分を問題にしてこんな議論を交わす時点で話が本題から逸れちゃっているわけで、こういう下半身事情の話がみんな大好きなのはわかるけど、今問題にするべきことが何なのかって忘れないでおきたいわよね。というわけで今日のしゃべり場ここまで! リ〜ベラル〜、トカ〜レ〜フ〜、キルゼムオ〜ル〜♪」
「はっ、リベ子ちゃんが毎回言っているこの締めの台詞の元ネタは、漫画『大魔法峠』! そしてその『大魔法峠』の作者である大和田秀樹がモーニングで連載をしていた『疾風の勇人』は安部総理の祖父である岸信介が登場したばかりなのに、先日、突然の打ち切りに! そうか……いつものように茶化していたけど、実はリベ子ちゃんは、この国の政権の在り方に、そしてその政権の御用聞きに成り下がりつつあるメディアの報道姿勢に静かに怒りを燃やしていたのかもしれない……!」
「いや、掲載順を考えてもあれは普通に打ち切りだったんじゃないかな……」
「そんなぁ……」

つづかない