自由主義少女リベ子☆マギカ[新編] 叛逆の物語

前回:自由主義少女リベ子ちゃんQ - 脳髄にアイスピック


「つい、この前まで正月気分だったのにもうセンター試験……冬の寒さと時間の流れの早さが身に染みるわね……」
「リベ子ちゃん! やさぐれている場合じゃないよ! 大変だよ!」
「あら、あなたは私の使い魔、私が呂布なら赤兎馬ポジションに当たるラルじゃない」
「例によって説明的な台詞をありがとう。そんなことよりこれ見てよ、これ!」
「なになに……ほえ〜、この炎上した人って、最近はてなブログで桃太郎ネタやおとぎ話ネタが大受けして、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い、星井にあらずんば七億にあらずと呼ばれてた星井七億さんじゃない。あんな人気者でもこんな小っちゃなことで炎上するなんて恐ろしいわねえ……」
「リベ子ちゃん、深刻そうな口ぶりを装ってるけど口元がめっちゃニヤついているよ! 全然感情を隠しきれてないよ!」
「ほら、だって寒いからちょうど暖を取りたかったところだし、それに他人の炎上のもらい火で一服するのが、はてな村での粋ってやつだから……
「最悪の寒村だね! そりゃ寂れるよこんな村!…………話を元に戻すけど、僕もけっこう牛丼チェーン店は利用するほうでね、最近のオススメはすき家の三種のチーズ牛丼に、トッピングの1辛を加えるやつなんだ。口の中でチーズのまろやかな口当たりと牛の脂、そこに絶妙な加減の辛さがマッチして……」
「ごめん、全然興味ないわ、その話」
「…………そう。とにかくね、ごちそうさまが不必要なマナーなんて言われているけど、僕もやっぱり食べ終わった後は店員さんにちゃんと言ったほうが」
その必要はないわ
「えっ、斎藤千和!? 何か今一瞬声が千和っぽかったけど、なんで!?」
「いい、ラル。牛丼屋さんで、ごちそうさまなんて言う必要はないの。そんなこと言い出す奴はむしろ害悪よ!
「なんでだよ! このトピ主さんのエントリ、『あ、こいつ現役時代はこうやって発言小町で釣りをしてやがったな』ってのがわかるこのエントリでもお礼は言ったほうが良いって書いているよ! 一言お礼を言うだけでお店とお客さんの間で円滑な関係が築けるんだよ!」
「そうね、確かにそう。でもこの人はこうも書いているわ。『(その産業自体がブラックなものであれば、こういった感謝の気持ちを伝えることは罪作りなのかもしれませんが、それは別の話。)』」
「……ハッ!」
「そう、以前話題になったすき家の強盗の話からもわかる通り牛丼屋なんてブラック中のブラック。劣悪な労働環境、求められる長時間勤務、決して高いとは言えない給料……お客さんからの『ごちそうさま』という言葉はそうした苦労を一時的に和らげてくれるかもしれない。けど、そうやってブラックな環境に慣れていき、そこに生き甲斐を見出してしまえば、行き着く先は、先日話題になった居酒屋甲子園よ。それでは結局、資本家の思う壺。ありがとうと声をかけられた労働者は決して幸せになれないわ」
「…………確かにそうかもしれない。けどね、リベ子ちゃん。僕は食事というものを大切に思っているんだ。だからちゃんと食べたときの感謝は素直に伝えたいと思うんだよ。それが間違ってるなんて言われたら…………」
「そう嘆かないで、ラル。私がとっておきの解決方法を考え出してあげるわ。ポクポクポクポク…………リベラル・マギ・ホーリークインテット!」
「出た! リベ子ちゃんの取りあえず言ってみた感が強い呪文っぽい何かだ! ってか元ネタ自体が呪文っぽい何かだけどそれ呪文じゃないから!」
「全ての解決方法が見つかったわ、ラル」
「本当かい? リベ子ちゃん!?」
「そう、さっそくこれを見て!」



「…………」
「…………」
「なにこれ?」
伏せ丼よ!
「伏せ丼……?」
「伏せ丼、それは食事が終了した時に、完食したことを表すと同時に、料理の提供への感謝の思いを込めてどんぶりを逆さに伏せる行為。そう、これこそが食事における究極の感謝の所作
「いや、これ普通に迷惑行為だよね。テーブルも汚れるし」
「結果ばかりを見て過程をないがしろにするのは良くないわ。大事なのは食事に対する感謝を籠めること。たとえそれが届かなくても貴方が感謝をした。その事実こそが大事なんじゃない。そして店員さんは貴方が汚したテーブルを拭きながらこう思うの、『こんなキチガイばかりが来る職場なんてさっさと辞めよう。そしてもうちょっと福利厚生がしっかりした職に就こう』って」
「…………」
「貴方も感謝の気持ちを伝えられる、店員さんも転職する気になれる。そして、こうした地道な活動が日本を支配するデフレからの脱却に繋がる。皆幸せになれるわ。あと、食後に会計するお店だとガッツリ怒られる危険性があるから、ちゃんと食券制のお店でやらなきゃダメよ
「やっぱりダメじゃないか!」
「昨年、某掲示板で頻繁に伏せ丼のスレが立ってたけど、結局流行らなかったからね。残念でもないし当然。まあ実際ミーはおフランス料理のお店しかいかないザンスから、牛丼屋でのマナーなんかぶっちゃけどうでもいいのよねー。しーずかに寄り添ってー、何処にも行かないでー♪」
「うわっ、根本のレベルで切断処理してきやがった! 流石リベラルだ! あと初回鑑賞時は『ふーん、なかなかいいんじゃない』とかそっけない口調だったくせに、EDが『君の銀の庭』なあたり、こいつ相当叛逆気に入ってやがったな!」


つづかない