『ガッチャマン クラウズ』を観終わったっス!
というわけで、二ヶ月前に推しに推していた『ガッチャマン クラウズ』が最終回を迎えたので感想を書くっス!
当然ネタバレっス!(CV:矢島晶子)
『ガッチャマン クラウズ』を薦めたくなる三つの理由。
- アーティスト: WHITE ASH
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2013/08/21
- メディア: CD
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正直なところ始まる前はめっちゃ馬鹿にしてた。
話を初めて聞いたときは「ちょwww今更ガッチャマンってwww四十年前のアニメじゃないっすかwww四十年前って言ったらドカベンがまだ柔道やってた頃じゃんwwwwww…………あれ? ということはドカベンって四十年前に連載が始まって、今でもチャンピオンで毎週連載やってんの…………? 水島新司マジパネえな…………」と恐れおののいてしまった。
また監督が中村健治と聞いても、ノイタミナを見ていなかったのでどんな監督か知らなかったし、「実写映画のガッチャマンにあわせて新作放映とか、タツノコはんも上手いこと商売なさるもんどすなあ」とか京言葉交じりでたかをくくっている始末。当然視聴しないまま終わるだろうと思っていたのだが、TwitterのTLを眺めていたら「はじめちゃん、おっぱい!」「はじめちゃん、めちゃシコ!」なる呟きが一部から上がっており、「おっぱいでめちゃシコか…………ったくしょうがねえなあ、お前ら!」という具合になった。
そして、その流れでの視聴後第一声が「…………ええやないの」ですよ。
ジョジョでも話題になった神風動画によるOPはスタイリッシュでクッソかっこいいし、CGをバリバリに使ったアクションシーンは、スーツのギミックも豊富で凄く楽しい。そして何よりヒロインのはじめちゃんが可愛い。一人称が僕、「〜〜っす」という言葉づかい、それに加えてハイテンションで電波な性格。
手帳に頬擦りするし会話するし、変な鼻歌ばかり歌うし、3メートル近い瞬間移動するジジイを見ても平然と会話するし、いきなりガッチャマンをやれと言われてもあっさり引き受ける適応力。さらに敵生物を見た最初の感想が「可愛い」だったりと、色々ピーキー。
あと、ガッチャマンのリーダーである宇宙人、パイマンも良いキャラをしている。
外見はパンダ。性格は頑固なおっさん。声は平野綾という一見ミスマッチな設定が上手く調和しており、見ていて凄く楽しい。
他にも物語の中心に、オカマ、女装癖、性別不明の宇宙人など、トランスジェンダーなキャラが三人も配置されていたりと、色々おかしなことをやっている。こうしたキャラクターたちの存在だけでも充分魅力的なのだが、他にも楽しめる様々な要素が盛りだくさんなので、順番に挙げていこう。
その1 まったく新しい作品であること。
冒頭にも書いたように初代ガッチャマンといえば元々は四十年前のアニメである。その続々編であるガッチャマンFですらテレビ放送されたのは三十年以上前。そこまで時代が離れてしまえば流石の矢口真里も「子供の頃から大ファンでした!」みたいなことは言えないだろう。それに彼女今それどころじゃないし……。
だから今の若者のガッチャマン知識といえば、「ジョーって人がめっちゃミサイルをぶちこみたがるんでしょ!」や「『第三世界の長井』の博士にそっくりなキャラが出てくるんだよね!」や「昔、SMAPがCMでやってたよね!」ぐらいのもんであろう。多分、「科学忍者隊」というフレーズを耳にしても、サラリマンをネギトロにするザイバツのサイバーなニンジャの集団を想像してしまうに違いない。
そんな状態でガッチャマンの新作をやると言われても、「…………自分初代を見ていないので新作とか結構っす」みたいな気持ちになってしまうよね。ってか俺はなった。
「だいたいさー、いくら実写映画でやるからって今更ガッチャマンとか持ち出されてもさあ…………そういえば今年の夏にはフルCGのキャプテン・ハーロックも公開されるらしいね、最近あれだね、コンテンツ不足に乗じて、偉くなったオッサンが自分が子供の頃に好きだったものを、金かけてリメイクしたがる傾向ってあるよね…………結局これもパッと見、新しめに見せかけてどうせ旧作の内容をなぞったものが出てくるんだろうな」って思ったらめっちゃ今風っすよ!
舞台は立川だし、時代は2015年だし、SNSめっちゃ流行ってますし、変身する人達、誰一人マントを羽織っていないっすよ! ってかヒーローどころかパワーローダーみたいになってる奴まで混じってるっすよ! ガッチャマンの名前を借りてやりたい放題っすよ、先輩!
大体一話のサブタイトルからして、「Avant-garde」ですからね。初めて見たときは「…………エイベントガーデ(震え声)」とか思ってたけど、アバンギャルドって読むんですってね、これ…………そう、アバンギャルド。つまりこのアニメでは既存作品の焼き直しなんかを作る気はさらさら無く、現代、この瞬間の最前線のアニメを作ってやろうという気に満ち満ちているのだ。
そして、その現代の象徴となるのが本作の中心に位置するSNS「GALAX」だ。
その2 ヒーローとの対立軸にSNSを置いていること。
現代のインターネットを語る上で、欠かせることのできないのがソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNSである。もう今この現代、老若男女、猫も杓子もSNSですよ。
日常的にPCを扱う多くの人間がtwitterやmixi、Facebookなどのアカウントを持っている。ちなみに、このネットの最果て、限界集落はてな村にも「はてなOne」と言われるSNSが存在し…………えっ、サービスもう終わったの!? マジで!? だって去年の2月にできたばっかり…………ああ、そうなの、ふーん…………まあ僕は誰からも誘われなかったから別にどうでもいいけどね…………あとwikipediaで、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの一覧とか見てたら、「紳士と淑女のためのクンニサークル」というのが見つかったので、SNSってすげえなって思った。
閑話休題。
とにかく最近はSNSが流行りで、ちょくちょく色んな形で漫画やアニメやドラマにもSNSが登場したりするのだが、本作ではそのSNSが話の中心に据えられているのだ。
その名も「GALAX」。
作中での描かれ方はアメーバピグやLINEとtwitterなど既存のSNSを上手く組み合わせた感じ。
こんな感じ。はてなOneにもこれぐらいのキャッチーさがあれば……。
そして、これらに加えてGALAX内にはユーザーの質問に答える超高性能AIが常駐されている。
何か困ったことがあったときに、相談すると上手い解決策を提案してくれるのだ、それも丹下桜ボイスで!
そんなサービスがあったら即登録するじゃないですか。だって丹下桜がこちらの質問に何でも答えてくれるんですよ。
「『紳士と淑女のためのクンニサークル』ってどういったSNSなの?」って訊ねたら、「クンニが好きな人同士で情報交換と親交を深めるサークル活動を行っています」って言ってくれるんですよ! 丹下桜が!! 最高だな、GALAX!
他にも、事故が起こったときに呼びかけたりすると、近辺にいるGALAXユーザーに連絡して、救急車よりも早く救助体勢を整えてくれたりするなど、凄く便利。
そんなGALAXのそのキャッチフレーズは
“世界をアップデートさせるのはヒーローじゃない。僕らだ。”
その言葉を裏付けるかのように第三話では、未殺菌の牛乳が流通するという事態に対し、GALAXユーザーたちの連携によって被害を減少してみせた。ガッチャマンの出番一切無し!
これを見て「そんな都合よくいくわけねえだろ」と思う人もいるかも知れないが、その数日後、高校生達がLINEによって避難情報を共有し、被害を減じるというニュースが報じられ、この作品で描かれているのが単なる絵空事ではないことを証明してみせた。
そして面白いのが、本作ではこうしたSNSを単純に肯定的に描いているわけではないのである。今回の描写に関しても、GALAXのユーザーたちは、自販機のコンセントを抜くなどして被害の軽減に努めたが、そこではGALAXから与えられた情報を疑う様子などいっさいない。そうしたGALAXを過信する彼らの様子がどこか薄気味悪いのだ。
こうした演出はこちらの深読みというばかりじゃなく、意図的にやっていると思われる。
SNSは人々に旧来のメディアでは考えられないほどの速報性をもたらしたが、それとひきかえにデマや風説の流布などもたやすく可能にもした。最近でも、東京都内でパーナさんなる人々が大変なことになっているという噂が流れ、一部に混乱と不安と爆笑をもたらした。
現状、作中のGALAXでは、丹下桜AIによる高度な情報統制が行われており、健全な状態が保たれているように見える。だが、そこに何らかの悪意が介在すればどうなるか?
今後は、おそらくそういった面もクローズアップされていくと思われるのだが…………さて、それではガッチャマンはそこにどう絡むのか?
その3 先の予想がまったくつかないこと。
ガッチャマンはヒーローものである。だからやはり変身して悪い奴と戦うんだろうというのが予想される展開であるが、本作品の場合、そうした予想が通用しない。だって戦う相手がいないんだもの…………。
第一話の時点では、MESSと呼ばれる謎の生命体と戦っていたわけだが、第二話で早くもコミュニケーションらしきものが成立し、和解を果たしてしまった。
一応人間に擬態して悪さを働く、ベルク・カッツェという謎の宇宙オカマも存在するが、やってることといえば、カップルを階段から突き落として「メシウマーーーーー!」と叫んだりするぐらいだ。
そういうわけで、第三話にして変身シーンなしというヒーローものとしては異例の展開を見せており、活躍するのはGALAXばかり。
そんなGALAXのユーザーたちは、作中で「ギャラクター」と呼ばれている。このギャラクター、聞いてもピンと来ない人も多いだろうが、実はこれ、初代ガッチャマンの敵組織の名前なのである。しかもGALAXを管理している丹下桜AIの名前が、初代のギャラクターのボスであった「総裁X」。
なるほど、じゃあ、やはりGALAXが敵になるかとも思うのだが、そう単純に話は進まない。ガッチャマンのメンバーの大半がGALAXのユーザーである。すなわちガッチャマン=ギャラクター。シリーズ内の固有名詞を上手く流用しながら、ますます先の読めない展開を作ることに成功している。
そもそも現代社会において、こいつを倒せば全てが解決する巨悪など存在しない。だったらコツコツ人助けや犯罪の取締りでもすれば良いのかもしれないが、作中ではそのような役割をギャラクターが勤めてしまっている。まさに「世界をアップデートさせるのはヒーローじゃない」のだ。そのような世界でヒーローはいったいどのような役割を果たすのか?
他にも色々と登場人物や設定にも謎が多く、先の展開が読めないわけだが、この読めないというのは決していい意味ばかりではない。
様々なテーマを盛り込んだこの内容がちゃんと12話内に収められるのかとか、変身できる五人のメンバーの内、現時点で二人しか変身していないが他のメンバーの活躍シーンが足りるのかとか、第三話にして、絵コンテ四人、作画監督六人という総動員体制に入っているが、スケジュールは大丈夫なのか? とか、思わず心配になってしまう部分も数多い。
そういった部分も含めていろいろな意味で予想がつかず、テンションの高い主人公に引っ張られ物語も進んでいき、まるでジェットコースター気分。というわけで、リアルタイムで今後の展開を是非とも見守っていきたいのが、残念な部分が一つだけ。
本作品は日本テレビでしか放映されていないのだ。Webでの配信も、放送日翌週の木金を除けば基本有料。もうすぐ公開される映画版の宣伝にもなるのだし、もうちょっと手軽に観れる環境を整えてくれるとありがたいのだが。
何はともあれガッチャマンという懐かしのヒーローを使っていながら、物凄く新しいことに挑戦しているアニメなので、観れる環境にある人はチェックしてみると良いっす!
他の方による『ガッチャマン クラウズ』の紹介エントリ
アップデートされるヒーローと世界「ガッチャマンクラウズ」 - 藤四郎のひつまぶし
http://www.swatz.net/entry/2013/07/30/203705
読んでいてもたいして良いことはないSF名作私選十作
こんな記事が話題になっていた:
読んでないとヤバイ(?)ってレベルの名作SF小説10選
http://d.hatena.ne.jp/Rootport/20130511/1368241656
「読んでないとヤバイ(?)」とかいかにも釣りっぽいタイトルをつけたあげくに、載っけている内容は有名な作家の有名な作品オンリーという、このクソつまらなさ。これだからNAVERまとめはどうしようもないって俺は言ったんだよ!…………あ、これNAVERまとめじゃないの。一人の人間が書いたの。本当に? 人工無脳か何かに書かせたとかそういうオチだったりしないの?
いや、だってさ、だってですよ、チミ。別に名作を上から順番に選んだらこういうラインナップになるのはある意味仕方ないかもしれないよ。けどさ、だったらそれなりに紹介の仕方ってもんもあるだろうよ。もう明らかに適当に鼻くそほじくりながら書いたようなのばっかじゃん。
20世紀前半のSF小説は雑誌連載が主な発表の場であり、内容も軽くて読みやすい荒唐無稽な物語が好まれていたらしい。バローズの『火星のプリンセス』シリーズや、たくさんのスペース・オペラが生み出された。ところが20世紀半ばを過ぎると、ただの娯楽にとどまらない、示唆に富んだ作品が書かれるようになる。
ジョージ・オーウェル『一九八四年』は、そういう社会的なSFの走りだ。世界観の見せ方がとにかく上手く、緻密な心理描写のおかげで作品世界へと没頭できる。本作は「全体主義国家の恐ろしさを描いた」と評されることが多いが、オーウェルが描いたのは恐怖ではなく、むしろ「自由」のすばらしさだと私は思う。
何よ、これ? 紋切り型の適当な言葉ばっか書いて、『一九八四年』読んでない人には肝心の作品内容がびた一文伝わらないじゃんかよ。しかもちょっと文章いじるだけでそのまんま『動物農場』の紹介とかにも使えるじゃんかよ。
「SF御三家」の一人で、科学雑誌に論文を投稿してしまうぐらい科学に精通していた。キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』の小説版が有名だが、元になるアイディアは『幼年期の終わり』に凝縮されている。
これに至っては、小学生がwiki見て書いた読書感想文並である。結局『幼年期の終わり』という作品の何が素晴らしくて、何でこれを読んでないとヤバイのか全然わからない。この紹介読んで、この本を手に取ろうと思う奴はいるの? ってか、君は本当にこの本を読んだの? とか言いたくなるレベルである。
そもそもである。SFを読んでいないとヤバいなんてケースはまず存在しない。SFを読んでいたおかげで受験に合格しましたとか、SFのおかげでキャバ嬢と店外デートオッケーもらいましたとか、そういう話は存在しないのである。普通に生活する分にはSFなんて読まなくても生きていけるのだ。
だが、ある例外的な一点において、SFを読んでいなければヤバいというケースが存在する。
それは他のSFファンと対峙した時だ。
孔雀が互いの背中の羽の美しさを競い合うように、SFファンも読んだ冊数で互いの力量を誇示するのである。
こんなことを言うと善良な巷のSFファンが「そんなことはないよ」とか言ったりするけど、そんなごまかしを真に受けてはならない。そんなことないことはないのだ。もうこれは事実である。地球が丸いのと同様に、SFファンは読んでる冊数や観た映画の本数を自然と競い合うのだ。別に大して読んで無くても凄い人だっていくらでもいるけど、そういう問題ではない。他のSFファンと出会ったら読んでいる冊数で互いの力関係や敬語の有無を決める。そういう種類の生物なのだ、奴らは。
だから、SFを読んでいないと他のSFファンに出会ったときに舐められるのだ。一度舐められたら、終生取り返しがつかんのがSFの世間である。これはヤバい。
とはいえ、数だけ読んでいれば良いというものではない。
むしろ、下手に名作の名前を挙げてしまったら、「ふうん、やっぱり初心者はそういうところから入るよねえ。わかるわかる」などと半笑いで言ってくるのがSFファンと言う人種である。本当嫌な奴らだな、SFファンって!
とにかく、何を読んでいるのかというだけでも人間心理のせめぎ合いが生まれ、いつの間にか勝敗が決まってしまうのがSFファンとの遭遇なのだが、そういった状況に追い込まれたときに負けないための十作を不肖私めが選んでみた。もしかしたら「別にSFファン相手に勝ち負けとかどうでもいいし……」と思う人もいるかもしれないが、だったら○○な十作とか読んでんじゃねえよバーカ! バーカ!!
ハイペリオン(ダン・シモンズ)
- 作者: ダンシモンズ,Dan Simmons,酒井昭伸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/11/01
- メディア: 文庫
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それはそれとして、『ハイペリオン』である。
ハイペリオンという星が何か色々ヤバいらしいのである。何がヤバイかというのはもう覚えていないので、自分で手に取って確認して欲しい。まあとにかく宇宙の存亡の危機とかそんな感じなので、それをどうにかするため集まったのが、四百歳の詩人、銀河系を駆け巡る戦士、カトリックの司祭、ハードボイルドな女探偵、娘に異常現象が起こった学者、数々の惑星を治める領事。そんな個性豊かな面子がハイペリオン目指して旅立つのだが、到着するまで暇だから、それぞれのハイペリオンに関わる体験談を語っていくというのが本筋の内容。
語り手となる人物を複数になることで、スペースオペラから、ほろりと泣ける時間SF、サイバーパンク的な探偵物語と様々なジャンルを自然と盛り込むことに大成功している。『ハイペリオン』自体はハイペリオンに到着して「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいな感じで終わるのだけど、ちゃんと続編となる『ハイペリオンの没落』が存在するので安心だ。こちらでは『ハイペリオン』で語られたバラバラに思えた複数の話が、惑星ハイペリオンの上で全て伏線となり鮮やかな完成を迎える。ハラショー。
たとえ、いくらSFを読んでいようがこれを読んでいなければ、「ふうん、『ハイペリオン』はまだ読んでないんだ。 じゃあ読んだ方が良いよ」とか言われて一気に形成逆転されるので、要注意だ! SFファンと対峙する上で、『ハイペリオン』は『HUNTER×HUNTER』で言うならば、念能力。『ジョジョ』で例えるならばスタンドである。読んでいれば威張れるということはないけど、読んでいなければ勝負の土俵に立つことすらできないのである。
続編に『エンディミオン』と『エンディミオンの覚醒』もあって、こちらも十二分に傑作だけど、けっこう長いので好き好きで。ただ主人公がヒロインが処女じゃなくなったことに物凄くショックを受けているシーンが個人的に印象的なので、「処女厨は日本人だけじゃなかったんだ!」みたいなことを思いたい人は読むと良い。
宇宙消失(グレッグ・イーガン)
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/08/22
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そのあまりにも圧倒的な力量に、「イーガンを読まずんば、SF者にあらず」みたいな風潮が存在したが、最近では新訳される小説がどれを読んでも「ふぇぇん、難しくて何を書いてるかわからないよぉ……」状態になってしまっているために、SFファン泣かせとなっているグレッグ・イーガンである。ちなみにこの「ふぇぇん」とか言ってるのは、中学生女子ではなく良い歳したおっさんなのでぶん殴ってしまってかまわない。
それはそれとして初期のイーガンはそんなに難しくない。多分。その中でも日本で初めて訳された『宇宙消失』は「夜空から星が消える」という宇宙規模の事象から「密室からの人体消失」というあたかも本格ミステリっぽい事件まで、ある一つのシンプルな理論によってまとめて解決する一撃必殺の切れ味が楽しめる一作。
SFファンは婚活女子が、「年収は最低でも八百万は欲しいわよねえ」みたいなノリで「最低でもイーガンぐらいは読んでいて欲しいよなあ」とか言い出すので、「めんどくせえな、こいつら!」と思うのをぐっとこらえて、読んだりすると良い。面白いし。
愛はさだめ、さだめは死(ジェイムズ・ティプトリー・Jr.)
- 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/08/01
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ジェンダーを題材にした作品が多く、正直あまり好きな作家ではないが、それでも彼女の作品には圧倒的な凄みと残酷さがある。
中でも本書に収録されている「接続された女」は酷い。主人公であるP・バークはドブス。未来人の流暢な語り口で、彼女のドブスっぷりが克明に書かれ、作中で紹介される彼女のエピソードもそれに輪をかけて酷い。口で酷い酷い言っても伝わりづらいので、ちょっと本文から酷い部分を紹介しよう。
なあ、いいかい。P・バークはオタクが娘って概念から連想するものとは、徹底的にかけはなれてるんだよ。そりゃ、彼女も女性さ。しかし、彼女にとってのセックスは、PAINという綴りのフォー・レター・ワードなんだ。まるきりの処女ってわけでもない。くわしいことはオタクも聞きたくないだろう。とにかく、P・バークがまだ十二ぐらいのときで、相手のやつらはフリーク好み、しかも麻薬と酒でべろべろだった。酔いからさめたとき、やつらはさっさと逃げていった。体に小さい穴、心に大きい穴のあいた彼女をそこへおっぽりだしてだ。彼女は痛い体をひきずって、最初で最後の避妊注射薬を買いにいったが、そのとき薬局の主人が信じられないと言いたげに大笑いした声は、いまも耳にこびりついている。
本当ひっでーな、このアマ。だが、ティプトリーはこの作品に限らず、こうした悲惨さを苛烈な文章で余すことなく書き綴る。この後P・バークは色々あった末に、自殺未遂したところを怪しげな人たちに救われて改造された結果、美少女植物人間の脳に無線接続されて第二の人生を送ることになるのだが……。
最近は「美少女になりたい」と言っているオタを指して、「オタクはジェンダーを超えた」とかのたまっていた人がいるけど、違うんですよ。彼らがなりたいのは「女」じゃなくて「美少女」なわけですよ。そこを誤魔化すと色々酷いことになるよ。ということをこの作品は教えてくれます。まあ「接続された女」にしか触れてないけど、他の作品も傑作揃いだし、短編集だから比較的楽に読めるので読んどけ読んどけ。あと小説だけでなく、彼女の人生それ自体も凄く興味深いのでちょっとwikipedia読んだりしてくると良い。
虎よ! 虎よ!(アルフレッド・ベスター)
- 作者: アルフレッド・ベスター,寺田克也,中田耕治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/02/22
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アルフレッド・ベスターによるオールタイムベスト常連作品。アメリカの作家兼編集者のデーモン・ナイトという人によれば、
ベスターは、この小説の中に、普通の小説六冊分ものすばらしいアイデアを持ち込んだ。それでも満足せずに、彼はさらにもう六冊分の悪趣味と、矛盾と、誤謬を持ち込んだ。
「おいおい、デーモン。そいつぁ盛りすぎだろ」と言いたくなるが、こいつが盛りすぎではないのである。たとえば本作の主人公、ガリヴァー・フォイル。宇宙で遭難した際に救助信号を無視されたことがきっかけで復讐の鬼と化した彼は、改造手術を受けて奥歯を噛むと体に仕込んだ加速装置が起動する。これは近頃映画化された石ノ森章太郎の『サイボーグ009』の主人公・島村ジョーの能力の元ネタである。そして、彼は怒ると顔に入れられた刺青が浮かび上がる。これも同じく石ノ森章太郎の『仮面ライダー』の漫画版の設定に使われている。
つまり主人公の設定一つとっても、日本を代表する作品に多大な影響を与えているのである。マジパネエ。
他にも少し前に「ラノベの文章酷すぎwww」と称して、このような画像が上げられていたが
これは実は『虎よ! 虎よ!』の1ページ。いきなりこれだけ見せられると何でこんなことになってんだよと言いたくなるが、ちゃんと読めば何でこんなことになってるのかはよくわかるので、ベスター強い。
基本的なストーリーラインが「復讐」とわかりやすく、盛りすぎなぐらい色々盛られているので退屈せずに最後まで一気に読める一冊。
ちなみにSFファンと対峙して「本作を読んだ」と言ったときに、『分解された男』をお勧めしてくる人は良いSFファン、『ゴーレム100』をお勧めしてくる人は普通のSFファン、『コンピュータ・コネクション』を勧めてくる奴はクソ野郎と覚えておくと、何かと役に立つだろう(ただし勧めた本を貸してくれるというのであれば、その限りではない)。
火星夜想曲(イアン マクドナルド)
- 作者: イアンマクドナルド,Ian McDonald,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1997/08
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そんなゴキブリと人間の死闘があったかどうかは定かではないが、テラフォーミングが進んだ火星を舞台に、ある一族の栄枯盛衰を描いたのがこちら『火星夜想曲』。
色々あって、火星の荒涼街道という人っ子一人いないオアシスに住むことになったアリマンタンド博士。彼が住むところには、殺し屋に追われる犯罪帝国の総帥や、母親とマザコンの息子、女飛行士、三つ子の兄弟など風変わりな人物が集まり、やがて一つの街が形成されていく。最初はちょっとした集落の話だったのに、二代目の代になると、ビリヤード火星チャンピオンや新興宗教の教祖などが誕生し、戦争が勃発して、サイボーグVS武装機関車が描かれたりと、話が進むに連れてどんどんスケールアップしていくのが作品の魅力。
文学史に残る名作の一つに『百年の孤独』というものがあるが、そのSF版とも言える作品なので『百年の孤独』と組み合わせて語ったりすると、「こいつはSFだけではなく文学も使用うのか……!」と思われたり思われなかったり。
『ワイルド・カード』シリーズ(ジョージ・R・R・マーティン他)
- 作者: ジョージ・R.R.マーティン,George R.R. Martin,黒丸尚,尾之上俊彦,山岸真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1992/09
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というわけで、異能者たちによる超人歴史改変SF。本作はモザイクノベルと言われ、複数の作家が同じ世界観を舞台に物語を綴っているのが大きな特徴。作家達が一押しのオモシロ能力の持ち主を主人公にして、それぞれ話を展開させていく。お勧めのキャラは、射精の寸前で我慢することで魔力を発揮するという黒人と日本人のハーフのポン引き・フォーチュネイト。絶対尿道に負担がかかっていると思う。それと、能力自体は最強クラスだが人前ではビビって力を発揮できないので、装甲車の中でひきこもって戦う無敵の勇者タートル。
また、本作は実際のアメリカを舞台にしており、実際の歴史を再現していることもあって、ヒーローたちが赤狩りにあったり、能力者がベトナム戦争に反対してヒッピー文化に傾倒したりします。イイネ!
上に挙げた作品ほどメジャーというわけではないけど、だからこそ読んでいるとちょっとした自慢ができるかもしれないし、何か長編映画化も予定されているらしいので、ヒーローものや異能力ものが好きな人は読んでおくと得した気分になれる。
BEATLESS(長谷敏司)
- 作者: 長谷敏司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/10/11
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元々はライトノベルを活動の場にしていたために、SFファンでもノーマークだったという人も多く、本格的にSFに活動の場を移してからはまだ冊数が少ないので充分に追いつける。
今回紹介した『BEATLESS』は少年と美少女アンドロイドのボーイ・ミーツ・ガールというベッタベタなネタをスタート地点にしながら、そっからヒトとモノの違いを丹念に描き出し、こころとは何ぞやというところまで話を持っていくド直球のSF。ニュータイプ連載時に載っていたイラストが載ってないのが残念だが、それらは公式HPで確認しよう。
ルサンチマン(花沢健吾)
ルサンチマン 上 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 花沢健吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/30
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かつてSF界ではサイバーパンクと呼ばれるムーブメントが起こった。だが、それももはや三十年近く昔の話である。もうそこら辺のおっさんやおばちゃんがごく普通にスマートフォンを操る時代において、サイバーパンクも何もあったものではない。そうした現代の中でも一番メッキが剥がれた存在がハッカーであろう。
SFに出てくるハッカーは大変かっこよく描かれていた。『ニューロマンサー』のケイス。『スノウ・クラッシュ』のヒロ。『攻殻機動隊』の笑い男。そういやマトリックスのネオもハッカーやってたな。フィクションの中の彼らは様々な形でコンピュータに侵入し、不可能と思われる計画と次々と実行してきた。
だが、現実はどうだ。最近ではネット上で犯罪予告を行ったハッカーが、猫カフェに入ってるところを写真にばっちり取られ、「ゆうちゃん」呼ばわりされて嘲笑の的である。ハッカーのかっこいいイメージは払拭され単なるオタク扱いである。あと、あの事件に関しては容疑者よりも警察やマスコミのやっていることの方がよっぽどSFっぽい。
閑話休題。そうしたインターネットやコンピュータが日常化した中で、「ネットとかに詳しい人ってやっぱり……」と皆が薄々気づき始めた時、そうした存在をモテない男子として思いっきり戯画化したのが、『ルサンチマン』なのである。
ネット上では伝説級の存在として一目置かれているラインハルトさんが、現実ではただの無職童貞のキモオタとして描かれる現実! 「やっぱ一日中ネットに接続してる奴なんてろくな奴がおらんかったんや! サイバーパンクなんて幻想やったんや!」と叫びつつ、その流れに沿って『ソードアート・オンライン』にまで話を発展させると良いかもしれないし、悪いかもしれない。
あと実際ネタ切れである。
バーナード嬢曰く。(施川ユウキ)
- 作者: 施川ユウキ
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2013/04/19
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本を読むことで周りから頭が良い人間に思われたいと考える少女、町田さわ子がヒロイン。この設定の時点でなかなか感情移入できてしまうのだが、本作で注目したいのが、ある種のSFファンを戯画化した神林しおりの存在である。
この娘さん、熱心なSFファンであり、啓蒙したがる性格も加わって、いちいち薀蓄が長い。そして性格が凄く面倒くさい。
「オマエがスタージョンの法則とか口にすんな」とか「『SF語るなら最低千冊』! ムリでもせめて普通に本屋で買える青背全部読んでから言え!」とかSF初心者相手にいちいちウザいのだが、この時の感情移入の対象が、町田嬢になるか、神林嬢になるかで貴方の人生は大きく異なるだろう。
それはともかく、面倒なSFファンに出会ったら「神林さんみたいな人って実在するんだなあ」と思ったり、「女子高生だと許せるけど、おっさんに言われると色々キツいな」と思ったりすると、心の奥底に芽生えたドス黒い感情が自然と浄化されるので、SFファン対策としてはこの上ない実用書である。
あと神林さんは、イーガンがわからないという町田さんに対して、「みんな実は結構わからないまま読んでいる…」とか、ディックの短編集を薦めておきながら「初訳? 面白い?」と訊ねられると、「ディックが死んで30年だぞ! 今更初訳される話がおもしろいワケないだろ!」とか、額に入れて飾りたくなるような発言を連発するので大変好感が持てる。
あと3つめぐらいから飽きていた。
涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流)
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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ハイペリオンから始まってハルヒで終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、YouTube以降のアニメ時代の先駆けとなった作品でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。
というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください…………などと突然、全然関係ないテンプレのネタを織り交ぜても通じない人には通じない。もう五年前のネタだしな、これ!
というわけで、とっくの昔に飽きているので、「ほらやっぱこういう十作ってのは他人に言われたのじゃなくて自分で見つけるもんだよな!」とか適当にそれっぽいことを言ってお茶を濁しまくって終わりたいのだけど、まかり間違って「SFを読み始めるために是非参考にしたい!」って真面目な若者がこの文章を読んでいたら悲しい気持ちになってしまうかもしれないので、とりあえずこれなんか読んでおくと良いのじゃないかしら。
- 作者: 伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 新書館
- 発売日: 2005/05/01
- メディア: 単行本
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日本人作家のSFが読みたかったら、2013年版の「SFが読みたい!」で日本人作家特集をやっているのでそちらを読むと良い。
- 作者: SFマガジン編集部,Pablo Uchida
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/02/08
- メディア: ムック
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まあ、めんどくさいSFおじさんなんて言っても、実態はこんなもんだったりするので、おっさんが進める古典なんか無視して、常に最新のSFを読み続けるのが若者にとって最善手かもしれない。出版社にとってもそっちの方が有り難いだろう。
大体さー「紙の本を読みなよ」とか言っても、ブックオフで買われちまったら、作者にも出版社にも一銭も入ってこねえんだよ、クソが! おらっ! 若僧連中はバイトして新刊買ってどんどん読め! 以上!
強姦、ミステリ、そして倫理。―『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』
今から約一年ほど前にHJ文庫大賞にて『せんせいは何故女子中学生にちんちんをぶちこみ続けるのか?』という作品が奨励賞を受賞したとき、僕は大いに落胆したものだ。
「一見過激そうなタイトルをつけてはいるものの、どうせそれは単なる言葉遊びで、問題作と謳いながらも結局内容は毒にも薬にもならないラブコメなんだろう? そういうのはもううんざりなんだよ」
それから一年の時が流れ、とうとうその問題作が発売された。流石にタイトルは変更されたものの、これはこれでろくでもないタイトルである。「こんなろくでもないタイトルをつけて、いったい中身はどんなもんなんだろうね」と手に取ってみたら主人公が本当に強姦魔で、物語開始時点ですでに中学生たちを強姦していた…………ああ、こういうの有りなんだ。ごめん、舐めてた。
この記事の人みたいにぜってーブラフだと思ってたわー。いやいやいやってか強姦魔って。あれかな? HJ編集部はGA文庫と同時期に創刊したはずなのに、近頃はどんどん差がつけられてばっかりだから、ヤケになっちゃったのかな? 焼畑農業はじめましたなのかな? と思っていたら、その内容が単なる出オチではなく、こちらが予想する展開を次々と飛び越えていく内容だったので、紹介せざるを得ない。
本来ならば、前知識なしで読んだ方が面白いと思うのだけど、尋常な精神の持ち主であれば、HJ文庫から出ている『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』なるタイトルの本を手に取ろうと思うはずもないので、尋常な精神を持つ人々のために、なるべくネタバレにならないように、本作を紹介していくのが今回の目的である。
完全にネタバレをする気はないとはいえ、前知識が無い方が確実に楽しめる作品なので、もし以下の文章を読む途中で興味を持たれるようなことがあれば、その時点でこの文章を読むのをやめて、直接実物を手に取ってもらった方が楽しめると思うのですが、はてさて。
インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI (HJ文庫)
- 作者: 米倉あきら,和遥キナ
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2013/02/28
- メディア: 文庫
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強姦(ネタバレ度・低)
まず強姦魔が登場する。当然、1ページに二回ぐらいは「強姦」か「犯す」という文字列も登場する。いや、別に強姦魔が主人公の官能小説にもここまで強姦って文字列は並んでなかった気がする。とにかく主人公はスナック感覚で強姦していく。となると、いかにして主人公は、少女達を強姦し攻略していくのか、その過程を描くと思われるのだが、本作の語り手は強姦していくならばその女子中学生たちの人間ドラマを描いた後で、というのがセオリーなのだろうけれど(キャラ紹介→強姦→後日談という一連の流れ)、前戯にはあまり興味がないのでそういうのは三行ぐらいで済ませたかった。
などと言い切っている。あまりの潔さに「セオリーじゃないよバカ!」と言うタイミングも失ってしまうが一事が万事この調子なので、こういうのがダメな人は読まない方が良い。いや、本当に。
実際のところ強姦といっても、物語開始時点ですでにヒロイン以外の強姦は終了しているし、実際の行為も行間の内に済ましているために具体的にエロい描写はほとんどない。
では、エロを除いて本作では何をして物語を牽引していくのか。それは日常系ギャグと推理だ。
かつて、電撃文庫の『撲殺天使ドクロちゃん』なる作品が話題となった。主人公の桜くんが未来からやってきた天使のドクロちゃんによって、情け容赦なく撲殺されては甦らせられ、その残虐性がギャグへと昇華されるという作品だったのだが、あれから十年ライトノベルは強姦ですらギャグにもできるようになったのだ!…………なったのか?
ともかく本作では強姦の扱いが凄い軽い。ライトだ! まさにライトノベルだ! 強姦魔の語り手によるレイプ・ユーモアとも言うべき不謹慎な発言が次々と連発し、強姦が未遂に終わっても「は、ここは引き分けだな、沢渡さん。我ながらいい戦いだったと思うぜ」で済ます。しかも主人公は非処女の存在を記憶できないので、強姦した女の子の存在を忘れてしまい、その後はモブ扱いである。当然かんなぎもビリビリである。色々酷い。
酷いのは主人公ばかりではない。野球部には女子マネをマワすためのヤリ小屋の風習が残っているし、ヒロインである比良坂さんは、主人公が犯そうと狙っていた初等部の女の子を主人公から遠ざけるためヤリ小屋に誘導してしまう。最悪すぎるね!
しかも、犯された少女たちはその後警察に駆け込むこともなく、野球をしたりバスケをしたり、普通に学園生活を送っている。日常系だ。散々強姦がまかり通った後にそんなもん通るわけねえだろ、と思うのだが、一応このシュールな状況を構築するだけの論理はある。そして、この論理こそがこの作品の真骨頂なのだ。
本作のヒロインである比良坂さんは、自分が強姦されかけても、クラスメートが強姦されても、そのクラスメートが妊娠して恋人が訴えに来ても、ろくでもない論理を次々と並べ立てて、主人公であるせんせいを擁護してみせる。
そうした詭弁や暴論によるこじつけは頭がおかしくて楽しい。強姦というインパクトもある。だが流石に中盤あたりになるとややクドく感じられるし食傷気味になってしまう。「もうそろそろ俺はこの本を壁に投げつけても良い頃合じゃないかな」と思いたくもなるが、本作にはそれを押しとどめるものがある。それが比良坂さんによる『六枚のとんかつ』を踏まえたミステリ談義だ。
ミステリ(ネタバレ度・中)
タイトルに「インテリぶる推理少女」とあるようにヒロインの比良坂さんは、ミステリが好きな女子中学生だ。ミステリに対しても一家言ぶち上げたい年頃である。比良坂さんは近頃の若者はミステリを読まないという話の流れから、「古典を読むのは推理小説が好きなんじゃなくて、歴史が好きなだけ」と言い放つ。その程度の意見であれば、良い大人たちも鼻で笑って済ませるだろう。だが、その後に積み上げてきたものが継承されていないのならば、……ならば逆に、歴史的な名作のネタを思いっきりパクってしまっても、子供たちには斬新だと言われるのではないですかと思ったのです。このご時世にあえて物理トリックを使えば超斬新扱いされるんじゃないですか。わたし、『六枚のとんかつ』を読んで思いついたトリックがあるんです!
と続けられれば、思わず青ざめてしまう。
この意見の是非や、『六枚のとんかつ』が歴史的な名作か否かは置いておく。
もし本書がメフィスト賞を受賞して講談社から出ていればこれも有りだろう。あるいは大学のミステリ系サークルに載っている同人小説でもそれほど驚くことはない。だが、これはHJ文庫だ。中高生を対象としているはずのHJ文庫読者と蘇部健一を読む読者層が重なっているとは思えない。その後も『六とん3』の表紙に色々言及しておきながら、内容に関しては「ごめん忘れた」とやりたい放題だ。こんなパロディ、本来の読者は誰も喜ぼうはずがないのに、あえて蘇部健一を選ぶ覚悟。到底正気ではない。タイトルからただのアホかと思ったらもっとおぞましい何かだった。よくよく考えれば、ただのアホかと思わせるタイトルにも「お前は何博嗣だよ?」と言いたくなるような英語のサブタイトルが入っているではないか。
こんな気の触れたマネをする奴が、クドクドしい冗長な展開ばかりを書いて終わるはずがない。そして、その期待に答えるがごとく、作者は残り100ページ地点で事件を起こす。そこから始まるメタメタしさを増した語りに、どんでん返しに次ぐどんでん返し。
そこでは、これまで序盤や中盤でギャグとして使われていた酷い展開や設定、ミステリに関する薀蓄などが全て意味を持った伏線となって再び読者の前に現れるのだ。一見、ギャグにしか見えない発言が伏線となるのは珍しいが、あそこまで酷いネタの数々がこの密度で別の意味を持ちうる作品はそうそう出てくるまい。
そして、このどんでん返しの連続の中で、読者はある重大なことに気づかされる。
この作品、実はいたって倫理的な作品であるのだ。
そして倫理(ネタバレ度・大)
以下は既読の読者に向けた文章となるので、未読の方はさっさと帰るがよろしい。という、それらしい断りを入れた上でいくらかの改行した後本題に入る。
本作は終盤で突然視点を強姦の被害者側に移す。そして彼女の口からは被害者の苦しみを語らせたり、何故エンターテインメントの作品では強姦魔は忌避されるのに、殺人鬼は受け入れられるのかという問題を提起する。この突然の掌返しを酷すぎる前半をフォローするための、アリバイ作りと見なすこともできよう。
だが、決してそれだけではない。それは本作のどんでん返しにも表れている。
俺が本作を読み終わった後に、「何て素晴らしい作品だったんだ! きっと多くの人がこの作品を読んで感動に打ち震えているに違いない。ぜひともこの感動を皆と分かち合わなくては!」と感想をググってみたら、もうみんなどいつもこいつもお冠で罵詈雑言のオンパレードですよ。
「あれー、俺だけー? 俺がおかしいのー? 伏せ丼ってマナーじゃないのー?」と言いたくもなるが、こうした非難や批判の中に多く見られたのが、「ちゃんと落ちていない」というコメントだ。だが、待って欲しい。この作品は本当に落ちていないのだろうか?
先ほども述べたように、本作は作中に何度かのどんでん返しがある。
ちゃぶ台に推理という食材を次々と並べ、並べ終わったところでひっくり返す行為の連続だ。しかし、もしあそこでちゃぶ台をひっくり返さず、料理が並んだ食卓の写真を撮ってFacebookにアップしてしまえば、きっちり完結させられたのではないだろうか?
それがご都合主義のハッピーエンドでも、比良坂さんヤンデレエンドでも、苦々しさが残る正統派エンドでも充分風呂敷を畳むチャンスはあったはずだ。推理を確定させるための条件が足りないというのであれば、それしかないという唯一解ができるように手がかりを書き足せば良いだけだ。
花山薫が愚地克巳に三度勝つ機会があったように、本作にもしっかりオチがつける機会が三度はあったはずなのだ。にもかかわらず、作者と作中の人物はそれを放棄した。それは、作者が物語に倫理を持ち込もうとしたからに他ならない。
倫理。強姦という言葉がここまで乱れ飛ぶ本作において、倫理を語るのもおかしいと思うが、作者はある程度の規範を持ってこの作品に臨んでいる。
語り手のせんせいは、一片の擁護の価値も無いクズでありながら、自身の行為を正当化することをしなければ、「強姦魔が更正なんかするわけねーだろ」と言ってみせる。またある作中の人物にも「人間にとって強姦があまりにも有害だからでしょう」と強姦が唾棄するべきものであると言わせている。
強姦魔にまともな末路など与えるべきではない。それが世間一般の倫理というものだ。
だが、本作は強姦魔だけの話ではない。
本作の語り手は冒頭で「人間はサイコロのようにテキトウに動くのだ」と語る。人間の言動など、論理だけでは説明がつけられるものではない。だからこそ語り手は、探偵であり論理を重んじる比良坂さんと終始対立する。
もし彼が言うことが正しいように、人間はサイコロのようにテキトウに動くのだとしよう。ならば、そのテキトウな動きの結果強姦魔に恋した少女がいたらどうなる?
そう、本作は「強姦魔」の話ではなく、「強姦魔に恋した少女」の話なのである。なるほど、確かに強姦は悪だ。ではその強姦魔に恋した少女の想いはどうするべきか?
作者はそのような難儀なテーマに挑みながらも、登場人物に「現代エンタメは犯人に罰を与えるという一般的な常識を忘れさせたらしい。倫理なんたるかを教えられていないのか。だから小説なんか読むと心が狭くなると言ったんだ」と語らせる。そして、それと同時に「比良坂れいの十戒」なる独自のエンターテインメントの法則を持ち出し、安易な死で終わるラストを避けようとする。
伊坂幸太郎の小説では、殺し屋や泥棒がかっこよく描かれることはあっても、強姦魔は大抵悲惨な結末を迎える。某江戸川乱歩賞受賞者による強姦を扱った作品でも、最後は強姦魔の死で終わった。
だが、この作者は強姦魔の死によるストレートな結末すらも避けようとした。だからこそ、あの結末なのである。その気になれば、そこそこ刺激的で意外性もある結末を与えることもできたであろう。確かに一部の伏線は解消されていない。だが、作者はその回収を拒否し、己の倫理とエンターテインメント性に向き合った結果、風呂敷を畳むことを拒否し、ラブストーリーとして作品に決着を付けたのだ。
当然あれでも納得いかないという人もいるだろうし、散々ネタにしておきながら最後で倫理的にもなられても、という意見もわからなくないが、そういう読後のもやもやとした感情も含めてこのテーマを扱った作品でこれ以上の結末は無いと思うし、仮にあるのだとしてもそれを新人のデビュー作に求めるってのは要求が高すぎるのではないだろうか。
おわりに
というわけで、以上が『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい In terrible silly show, Jawed at hermitlike SENSEI』に対する私の感想である。ミステリ的に踏み込んだ批評は限界小説研究会とかの真面目な人がやったり、あるいは読書会で語り合ったりすれば良いと思うの。本作を読み終えた直後、Twitterには「俺が『ビアンカ・オーバースタディ』に期待していたものが何故かこれに入っていた。」と書いた。
本作は強姦という単語を平然とギャグに組み込む不謹慎さ、終盤のどんでん返しの連続のエンターテインメント性、読者の倫理感に一石を投じる結末。何もかもが過剰で、悪辣で、暴力的で、どこを切っても文句なしの問題作だ。『ビアンカ・オーバースタディ』ですら、強姦は未遂に終わっていたというのに……。そういえば、本作は作中で『ビアンカ・オーバースタディ』や筒井作品にも言及していたし、振り返ってみれば、序盤の主人公の人でなしな語り口も少々筒井康隆っぽくもある。
この作品をろくに予備知識なく読めたことは幸運だった。正直ここまで楽しめたのは実際に読み始めるまで、本作を駄作と思い込んでいたことの影響も強い気がする。
作中でも、「若者はあらゆる名作を名作と知った上で読む(中略)だからこそああこんなものなんだと、この程度のものだったのかと落胆してしまう。その名作が名作である前に読むことができた年配の方に称賛されたのだとしても、若者には貶されてしまう。」と書かれていたように、もし本書を読む前に、ここまで作品を褒め称えた文章を読んでしまった人がいたら、俺のように楽しめるかというと難しい気はする。まあ、けど僕はちゃんと警告したし…………。
今から一年半前にHJ文庫は『僕の妹は漢字が読める』で一部SFクラスタから称賛の声を浴びたりもしていたが、もしかすると今回も一部ミステリクラスタからいろいろな意見を受けることになるかもしれない。ミステリ読者はともかく、多くのライトノベル読者は現在進行形で呆れたり怒ったりしているわけだが、それに懲りずに今後もこういった作品に賞を与えてくれると、ライトノベルという土壌もより豊かになっていくのだろう。
というわけで、無闇に長々と書いてしまったが、もしこの文章を読んでくれた方が本書に興味を持ってくれれば嬉しいし、あるいは俺の発言を真に受けた結果、「全然内容違うじゃねえか!」とか「これに倫理性を感じるお前の脳みそはおかしい!」などと激怒する結果になってもそれはそれで楽しい。あと、この作者は多分歌野晶午ファンのはずなので、歌野晶午好きは読んだりすると良い。
何はともあれ、この文章を読んで、一人でも多くの女子中学生が本書を手に取ってくれることを祈りつつ、キーボードを擱く。
文学フリマへの挑戦とその記録
先週日曜、id:harutabeと文学フリマなるイベントにお出かけし、同人誌を頒布してきた。その際にid:harutabeが「これがあると何かと便利らしい」と聞きかじりの知識でスケッチブックを持ってきたので、有効活用させてもらった。
以下はその記録である。
「とりあえずスケッチブックだったらこれだろう」*1と思って書いた。
id:wtnb18以外は誰も反応してくれなかった。
向かいにはてなで人気の映画評同人誌サークル「Bootleg」があったので、はてな文壇を名乗っていたし掲げてみた。
鼻で笑われた。*2
自己紹介が面倒だったので書いた。
もはや頒布のサポート手段などではなく、口が不自由な人のためのコミュニケーションツールである。*3
これ持ってたら、そこそこ手に取ってくれる人がいたので、本来はこういうことを書くための道具だったんだと思う。
文学フリマということで「飢えた子供に対して、文学は何ができるか」というサルトルのメッセージを改めて訴えるために描いた。
苦笑いされた。
隣のフェミニズムサークルがバンバン売れていたので、それにあやかる意味で描いた。
英語での政治的メッセージがカッコイイ。
これを描いた直後、寛容な人物であるid:harutabeに「お前いい加減にしとけよ?」と怒られた。
クジラックスの『ろりとぼくらの。』がしんどい。
「今ロリコンが最も注目しているエロマンガ家であるクジラックス先生の『ろりとぼくらの。』が発売されましたけど、どうですかね」
「昔、『俺はもっと幼女が泣き叫んで嫌がってるのを有無を言わさず問答無用で犯すゲームがやりたいんだ!』みたいなこと言ってたけど、何かこれ読んだらちょっと引いたね。歳かねオレも」
「それは年齢の問題なのかという気はするけどな」
「いや、毎日毎日鉄板の上で焼かれる鯛焼きのように、オナニーを欠かさない生活を送ってるとね、年齢で性的嗜好って結構変わってくるからね。昔は絶対無理だと思ってた実母モノとか今めっちゃ抜けるからね」
「さすがにそれは変わりすぎだろう」
「いや、本当マジで、マジで、マージーで。みやびつづるとか甚六とか全然いけるようになったからね。『悪くない! けっして悪くないぞ! そうだ これは子供の頃キライだった味だ』みたいな感じで」
「そんな『孤独のグルメ』っぽく言われましても…………ってか子供の頃はダメだったんだ」
「うん、高校生ぐらいの時は『母親で抜くとか頭おかしいんじゃないの?』とか思ってたけど、やっぱ人って変わっていくものだからさ」
「良いことを言おうとしてるみたいだけど、この流れではどうあがいても無理だかんな」
「だからオレは青少年に向けて声を大にして言いたいんだけど、自分の性的嗜好は定期的にメモって残しといた方が良い。それが十年や二十年後、読み返したときに『あっ、オレはこのタイミングでハンドルを切り損なったんだな』みたいなのがわかって楽しいよ」
「そんなこと言われても青少年困るよ。まあ、つまりロリコンじゃなくなったってことですか?」
「いや、全然幼女でも抜けるんですけどね。ロリコンでマザコンなんで、血筋さえ良ければネオジオン総帥ですよ」
「別にシャアは性的嗜好が評価されてあそこまで上り詰めたわけじゃないからな?」
「そんなアテクシでもこれはドン引きですね。『あ、これは誰も幸せにしないマンガだな』って読んでて思ったね」
「お前のこれまでの話もそんな感じだけどな」
「言い方を変えれば、あんま『ポカポカしない』ですね」
「何でエヴァっぽく言い直した?」
「いや、要するにね、『エヴァ』なんですよ、旧劇なんですよこれは」
「あっ、嫌な感じに大きく出ましたね。続けてください」
「だからさ、エロマンガにしろ官能小説にしろAVにしろ、何が求められているかっていうと、結局は『オレに気持ちよくオナニーさせろ』じゃないですか」
「そればっかりじゃないとも思うんだけどね」
「そりゃ、大量に出てるからいくつかは例外がありますけどね。そう考えると、エロゲーなんてのは変な方向に進化したよなって気はしますね。18禁なのに、エロ以外の物が求められるっていう」
「わざわざ『抜きゲー』みたいな言葉も出来るぐらいですからね」
「けど、エロマンガはそこまで発展してなくて、基本オナペットになるかならないかなんですよ。で、エロマンガって一話あたりのページ数があんまないじゃないですか」
「しかも一話完結形式だしね」
「そう、だから短いページ数にある程度お話とエロを詰め込もうとするとキツキツになっちゃう……キツキツになっちゃうってエロくね?」
「うんうん、そうだね。君が全面的に正しいね。それで?」
「だから基本的に多くのエロマンガってのは、エロに関係ない描写とかは極力削ぎ落とされがちなんですけど、クジラックスのこれはそうじゃない」
「エロ以外が入ってる、と」
「そう、そのエロ以外のパートが、ギャグとかだったら楽しく読めるんだけど、クジラックスはエロマンガに『リアル』を持ち込もうとするのね」
「…………あー」
「基本的に小学生とセックスする話しか載ってないんだけど、半分ぐらいがバッドエンディングなんですよ」
「当然の末路ですわな」
「だってレイプものだったらともかく和姦でもバッドエンドになるんですよ。2chとかでたまに見かけた『20歳なんですけど』の画像にあんな悲しい物語が隠されていたなんて……あんまりだよ、こんなのってないよ……」
「あれって悲しい物語だったんだ。まあ仕方がない気もしますけどね」
「いや、だってエロマンガなんてのは基本的にファンタジーじゃないですか。もちろん、小学生とセックスしたらあかんってのはみんなわかってますよ。けど、それでもオナニーの時ぐらいはファンタジー世界に浸って気持ちよくなりたいじゃないですか。それなのに、そこにリアルを持ち込んで誰が喜ぶんだよって話ですよ。『現実に戻れ』ってか、旧劇場版か、庵野気取りか、お前はって話ですよ」
「あ、ちゃんと話が繋がった。ロリでリアル系のエロマンガって聞くと、町田ひらくとか想像しますけどね」
「ほら、町田ひらくってのは、絵柄からしてそういう安易な性的妄想を拒んでるじゃない。『お前小学生と簡単にセックスできるとか思ってんじゃねえぞ』っていう」
「別にそこまで言ってないと思うけど」
「まあ、けどあの内容でオナニーするハードルってかなり高いし、そもそもあの絵で勃たないって人も多いと思うんですよ。けど、クジラックス先生の絵はそうじゃないんですよ。普通に今風の二次元ロリの絵柄だし、エロシーンもめっちゃエロいんで普通に勃つんですよ。最近はおちんちんの勃起具合が芳しくない僕の息子も元気にオッキするんですよ」
「お前の下半身事情とかものすごく耳を閉ざしたいね」
「お母さん、何だか僕急におちんちんが固くなっちゃった……これ病気かな、僕死んじゃうのかな……?」
「さっさと死ねよ。ドサクサに紛れて今お前が読みたいエロシチュエーションの話してんじゃねえぞ、クソが」
「まあとにかく、町田ひらくは『勃たないし抜けない』けど、クジラックスは『勃つけど抜けない』なんですよ。これは凄く珍しいな、と。絵柄は凄いオタク向けなのに、内容は割りとそうでもないっていう」
「ってか貴方が抜けないって、具体的にどんだけ酷いの?」
「たとえばあずまんがツイッターで話題にした『ろりともだち』っていう話は、大学のサークルに馴染めなかったロリオタ二人が、ワンボックスで日本中を旅して行く先々で女の子をレイプして回るっていうアメリカン・ニューシネマな内容なんですけど」
「ああ、もう聞かなきゃ良かったね、本当」
「で、まあ男性目線で片っ端からレイプしていくんだけど、最後に辛い結末が待っているっていう、甘くて苦いママレードな一作なんですよ」
「おい、なんで今ママレード・ボーイのフレーズ入れた?」
「それだけでも充分苦いんですけど、単行本の巻末には、『ろりともだち』の描き下ろし番外編が入っている」
「ほう、エロいの?」
「いや、エロ描写ほぼ皆無で、本編でレイプされる女の子たちの平穏な日常が描かれている」
「それ、誰が読みたがんの?」
「でしょー。そりゃ、そういうのがあった方が逆にシコれるって人種もいるけどさあ、普通は引いちゃうよ。踏み絵か? 『ロリコンだったら、これで抜いてみろや』っていう踏み絵なのか?」
「ある種の露悪趣味ですわな」
「屈折とも言えるし、挑発的とも言えるし、まあそこら辺は識者の判断に任せますけど。他にも『ロリ裁判と賢者の石』っていうファンタジー通り越してちょっと頭おかしい作品があるんだけど、これも女の子が『それでもやっぱり殺したいよ?』とか言っちゃう」
「まあ言いますわな」
「ロリコンっていうのは、世間にうしろめたい性癖だから、そういうの突きつけられちゃうと色々しんどいんですよ。多分オレもそうした反動で実母モノにはまるようになったんだけどさあ」
「一応言っとくけど、実母モノって下手したらロリコン以上に性質悪いからな?」
「二次元のママンって年取っても劣化しないから素晴らしいよね。授乳手コキとかマジ抜ける」
「わかったから話を戻せや」
「そうやって、思いっきりオタク向けな絵柄で、ロリコン向けな話を書いてるのに、みんなが目を背けたくなるところにも切り込んでいく。そういうピーキーさからしてマンガとしては凄く面白いんですよ、抜けないけど」
「こだわるね」
「ほら、ちょっと敗北感あるし。だけど、じゃあその面白いマンガを誰に勧めようかって話になった時に物凄く困るじゃないですか」
「『Fateは文学』みたいにはいかない、と」
「『Fate』よりかは文学っぽいけどね。まあ、けど万人に向けて小学生がレイプされてばかりの本を勧めようとしたら、ただの頭のおかしい人じゃないですか」
「そういうのがわかる辺りに、貴方も四年前よりは成長しましたね」
「えへへー」
「気持ち悪い」
「旧エヴァだ! 話が繋がった!」
「いや、そのネタはもういい。何にしろ扱いに困る内容ってことね」
「だから、こういう場末のblogでひっそりと紹介していかざるをえない」
「まあネットの口コミは強力なんで、ここで広めなくても、結局話題作になるでしょうけどね」
「そのうちA・浪漫・我慢みたいに一般紙デビューして、ヤングアニマルで連載持って、羽海野チカの単行本の帯に推薦文とか書きそうだよね」
「流石にそれはない」
「けど、現時点じゃただのロリ向けエロマンガなんでね、なかなかこういうのって本屋さんで手に取るのは抵抗があるじゃないですか。だからですねこの会話をですね、blogに載っけてですね、ちょっとアフィリエイトでお小遣い稼ぎをですね」
「LOのマンガってamazonで取り扱い中止されてっから、アフィ載せられないぞ」
「死ねよ! ファック! 何だよ、もー。みんな死んじゃえよー」
「もういいや、そろそろ締めの言葉をお願いします」
「小学生レイプしてぇええええ」
「…………お前の中では上手くオチをつけたつもりなんだろうけど、読んでない人には何一つ伝わらないし、ただの危ない人だかんな、それ」
「こんな気持ち 僕らにしか……わかんないよねぇ」
「いや、だからそれも読んでないと…………ま、いいや。それじゃあ、またいずれ」
ヱヴァQの話をしよう
ネタバレ怖いネタバレ怖い。だったらネタバレされるよりも先に見て俺がネタバレしちゃえばいいじゃないというわけで、ヱヴァQを見てきました。
以下ネタバレ。