セカイ系十大小説

巷じゃ、ぼくの十大小説 - 愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)とかhttp://d.hatena.ne.jp/idiotape/20071020/1192873365なんていう世界十大小説が流行っているけど、こいつはどうだセカイ系十大小説。
このブームなら既に誰かがやってるだろうと思った、誰もやってねえ。
誰もやらねえなら俺がやる!
ゼロ年代も残り2年ちょいの今となっては腐臭紛々、超拡大解釈版セカイ系十大小説だ!


はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

はてしない物語 (エンデの傑作ファンタジー)

小説にセカイ系を見出そうとするなら、小説の中の小説に鮮やかな世界を作り出したミヒャエル・エンデを避けて通るわけにはいかない。
この小説に関してはいくらでも語ることがあるのだけど、それはまた別の話。



ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

セカイ系の強さとは即ち世界に対する疑念によって決まると言っても過言ではない。
世界を疑えば疑うほど、そいつのセカイは強くなるのだ!
そして、世界を疑うパラノイア野郎といえば、ご存知P・K・ディック!
果たしてこの世界は本当に俺の世界なのか?
イカれた世界に、ユービックスプレーをぶち撒けろ!



夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

ミステリーマニアにとってのセカイなんてのは孤島に被害者と犯人と探偵さえいればこと足りる。ついでに密室もあれば最高だ。
犯人が殺し、人が死に、探偵が解く。
しかし、探偵のいない孤島で殺人が起きた場合、それはもう事件ではなく、収集不可能な混沌だ!
探偵不在の孤島で起きる数々の奇蹟!
二作目にして賛否両論、毀誉褒貶の嵐を巻き起こした究極のアンチ・ミステリー!
闘え、如月烏有! 解決しろ、メルカトル鮎



飛鳥井全死は間違えない

飛鳥井全死は間違えない

1999年の時点で、小学生メイドを三角木馬に乗せたり小便をぶっかけたりする事で、セカイからの脱出を図る『フロレアール』や、『未来のイヴ』を原型に、美少女ゲーム全肯定をしたはいいが、今となってはみさくらなんこつ原画の妹を奴隷にして調教するゲームという認識しかされていない『未来にキスを』を生み出した鬼才元長柾木による由緒正しいセカイ系小説。
まっとうなセカイ系過ぎて語る言葉がない。 



WATCHMEN 日本語版 (電撃コミックス)

WATCHMEN 日本語版 (電撃コミックス)

小説じゃねえじゃねえか、と言われるかもしれないが、WATCHMENという作品の密度はコミックというレベルではなく、最早文学の域に達しており、更に言うならば、Fateも文学、鳥の詩は国歌CLANNADは人生
それはそれとして、例えどんなに世界が複雑になり、ヒーローが活躍するのが困難な時代になっても世界の命運を握るのはいつだって、全身タイツの男達だ! 
ナイトオウルとロールシャッハの生き様に涙しろ!!



ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

戯言シリーズの最終作にして、テーマは「世界の終わり」だが、語っている事はただ一つ!
ケンカの強い奴が一番偉い!
お前のチンケなセカイを肯定してくれるのは、知恵でも自意識でもない! 
鍛え上げたお前の身体だ!
マスかきやめて、レッツ! ブートキャンプ!



考えてみれば、セカイ系という作品は空間にばかり注視して、時間という概念に関して無頓着すぎた。セカイというのは何も今この瞬間だけではない。過去も今も未来も全部ひっくるめてセカイなのだ。
だとするならば、時間を支配するものこそが、セカイ(ザ・ワールド)の帝王!
過去も未来も自由自在のビリー・ピルグリムこそがセカイ系時間部門のチャンピオンだ!
単に振り回されているだけってのは内緒だ!



鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

日記には人の自意識が文章になって表れている。言うならば、そこにはその人自身の最もミニマライズされたセカイが浮き上がってくるのかもしれない。
日記形式で書かれた作品の中で、夫婦が互いにそれぞれの日記を覗き合う様はまるで二つのセカイが侵食しあってるようだ! 日記をblogに改変したら今でも充分いけるテーマだ!
しかし、そんな小手先の話はどうでもいい!
これこそがエロ爺が書いた、妄想爆裂エロ小説だ! 
こんな風に年を取れるなら長生きするのも悪くないかもしれないね。



新興宗教オモイデ教 (角川文庫)

新興宗教オモイデ教 (角川文庫)

セカイ系なんていくら話の規模を大きくしたところで、結局は、分不相応な力と、暴走する自意識と、身近な美少女の三題噺でしかない!
だとするならば、その三要素全てを過不足なく含んだ大槻ケンヂのオモイデ教こそが紛れも無いセカイ系の文学だ!
俺が欲しかったのはこんなもんじゃなかった!
そんな思いを噛み殺し、撃ちぬけメグマ波!



虚人たち (中公文庫)

虚人たち (中公文庫)

結局は小説に書かれてるセカイなんて全部嘘だ! 虚構だ! フィクションだ!
筒井康隆は、その虚構が出来る過程から、その構造、そして終わりまでを僕らに明確に見せてくれた、この作品こそがセカイ系十大小説の最後を飾るに相応しい。
セカイなんて嘘だ! 
本なんて捨てて、現実相手に撤退戦だ!