『フォースの覚醒』と一時期流行った二世もの漫画について。

 『スター・ウォーズ』の新作が十年ぶりに登場で巷で話題っつーわけで観に行きました。別に僕は旧三部作からの大ファンとかいうわけではなく、というか旧3部作はテレビ放送でしか見た事がない。けれど新三部作は劇場で見たし、旧作ファンがとことんダメだししているエピソード1だってそんなにひどいと思わない。むしろ「ポッドレース結構面白くなかった?」「ダース・モールのデザインは今でも出色の出来だと思うよ」「なんでみんなジャージャーそんなに嫌いなの?」という気持ちがあるし、つまり、あまり一般的なスター・ウォーズファンの感想じゃないんですよ、これは。というエクスキューズを配置し終えたのというわけで、以下ネタバレ。



 率直な感想を書くと、つまらなくはない、決してつまらなくはないが、じゃあ凄く面白いか? と問われればノーと答えざるを得ない。
「10年待って出てきたのがこれかよ」と考えるとむしろ残念なレベルに思えるのだが、それはこっちの考え方が間違っているので、「全9部作と銘打ってはいるものの絶対に出るはずがないだろう。出たとしても今のルーカスじゃ……」という立ち位置にあったエピソード789という正当な続編が映像化されて、そこに旧3部作のオマージュもたっぷり盛り込まれて、そこそこ面白いのだからファンとしては小躍りして喜ぶ内容なのだろう。
 2年前『ドラゴンボールZ 神と神』を見て、映画の内容自体は凄く面白かったわけではないものの、久々にZ戦士の雄姿を見ることができて心地よい満足感に浸ることができた……という記憶があるのだが、スター・ウォーズファンからすれば、今回の映画はその時の俺の満足感を何倍にも増幅したものなのだろうと考えれば、やはり良い続編だったのだろう。あれだけハン・ソロの活躍が見れたなら旧作からのファンは大満足だろう。
 しかし、まあ、しかし、個人的な感想としてはイマイチどうも乗り切れず、何が問題なのかと言えば、やはり新たなる主人公3人組、すなわち、レイとフィンとカイロ・レン。
 現時点で色々と謎が多いレイのキャラが弱くなってしまうのはしょうがないとしても、フィンに関しては面白黒人バディという役割を超えられず、イマイチ掘り下げが上手くいってなかったように思える(序盤で人を殺さないみたいなこと言ってた割にストームトルーパーはガンガン撃ち殺していたなこいつ)。そして何より一番の問題がカイロ・レンである。
 ハン・ソロレイア姫の息子でさらにルークの弟子でもあるという、本来なら主人公を張っていてもおかしくない経歴の持ち主ながら、ダークサイドに落ちて敵に回ってしまうという、ものすごくドラマティックな背景を持つ男だ。もしwikipediaで設定だけ見たら凄くかっこいいキャラを想像するに違いない。映画冒頭でブラスターをフォースで静止するシーンも凄くかっこよかった。それが何だろう、こいつの物語が進むにつれて残念になっていく感じは。
 作戦が失敗するとライトセーバー振り回して物にあたるし、「衛兵!」と熱いコールを飛ばすも思いっきり避けられるし、フォース歴1日の女にフォースで押し負けるし、ライトセーバー歴2日ぐらいの元ストームトルーパー相手に苦戦するし、ライトセーバー歴1日の女に負けるしさあ。いや、銃で脇腹撃たれて痛いのはわかるよ。だからそんな胸叩いて俺我慢してますアピールしなくていいよ……。最近姿を見かけないパッション屋良のこと思い出したよ……。
 そして一番致命的な問題は仮面を外した時のパッとしなさである。ハリーポッター顔と呼ばれたり、他にもアメリカの学校で銃乱射してそうとか、イギリスのパブの汚ねえ便所で薬キメてそうな感じとか散々な言われようである。
 だが、そういういろんな点で未熟なところがカイロ・レンの魅力なのかもしれない。今後シリーズが進むにつれて、彼も成長し魅力的な悪役になっていくのかもしれない。皆エピソード8に期待してくれよな! けど、待てよ、こいつエピソード4でいうところのダースベイダーの立ち位置だよ。敵役としてショボすぎない。最初ホログラムだとわからなくて、凄く大きい宇宙人に見える人だけじゃなくて、後見人的ポジションのキャラも近くに置こうよ。こいつ敵にしても盛り上がらないよ、絶対。メモリアル・パンフレットの表紙になって存在感を示していたキャプテン・ファズマもあっさりゴミ捨て場に流されちゃったしさ……。
 そんなイマイチパッとしない新キャラの分まで大いに活躍したのがハン・ソロである。物語もミレニアム・ファルコンにハン・ソロとチューバッカが帰ってくるあたりで一気に面白くなっていく気がするのだけど、そもそもこいつが活躍しすぎたせいで新キャラ3人の影が薄くなったのでは、という気がしないでもない。
 ここで僕が思い出したのが一時期大量に生産された、大ヒットした少年漫画の人気キャラの息子を主人公に据えた「二世もの漫画」である。最近でも『魔法先生ネギま!』や『MAJOR』の続きが始まっているし、やっぱ安定してゼロから新作をやるよりは安定するんでしょうな。
 作者としては前作主人公の血筋を引く新キャラを主人公を新たな出発点にして、新しい物語を編み出していきたいのだろう。しかしいつだって、この手の漫画で盛り上がるのは前作の人気キャラやその関係者が登場したときだ。今ゴラクでやってる『極!! 男塾』だって、これまでの男塾シリーズキャラが総出演だっていうのに、男爵ディーノが裏切る裏切らないをやっている今この瞬間が一番盛り上がっている。『キン肉マン』に至っては2世の連載がストップして、現在では普通に初代キン肉マンの続きを連載しているし、結局それが最高に盛り上がってしまっている。だってこのタイミングで、シルバーマンが降臨するんだぜ。大興奮に決まってるっしょ、そんなの……。
 つまり、この手の続編で新キャラと旧キャラの両方を並び立たせるというのは大変難しいという話で、まして人気シリーズの続編となると、それまでのファンからの注目も大きいだろうし、そうなるとハン・ソロハン・ソロ、姫将軍レイア、ハン・ソロみたいな感じでスポット当てて、最後にちょっとだけルークの顔見せて次回に続くで締めたのは悪くない判断だったのかもしれない。続きは凄く気になるし、旧作からのファンも大満足だ。
 けど、やっぱ新世代のキャラがぱっとしないと、これからのシリーズが上手くいかないし、新規のファンも誕生しないんじゃないのかなあとも思う。特にフィンに関しては実はメイス・ウィンドゥの子孫だったとかいう設定がつけられて、紫色のライトセーバーをブンブン振り回すぐらいの活躍を見せないと、人気キャラになれる気がしないんだよなあ……今作で世代交代に成功した感じがするのマスコット枠のBB-8ぐらいだけっぽいし……。
 あと、先日スター・ウォーズで最強のパイロットは誰かって記事ですごい地味な人が話題になっていたけど、飛行機の外でも出番の多かったポー・ダメロンさんは今後スター・ウォーズ界のパイロット枠の期待の星として頑張ってもらいたい。メイビーフォースウィジュユー。